一番損をしないのは…

放置してもそのまま価格が維持され続ける空き家など、もはや一部の好立地に限られている。価格を維持するために、その空き家の定期的な維持管理が必要になるのであれば、それは事実上のマイナス物件である。今後も発展や地価の上昇が見込めないような地域では、ただ漫然と維持し続けていても事態は変わらず、管理費用の支出が嵩む一方だ。

相続してもその家の使い道がないのであれば、それはもはや「売る」のではなく「手放す」ぐらいの感覚で、手残りがあれば幸運ぐらいの認識で臨んだほうが、結果的には一番損をすることもなく、空き家の管理に悩まされるリスクもなくなるのである。

歪(いびつ)な状況だと思うのは、そうした放置空き家と、市場で売られている売家は、元々の住宅としての条件には大差がないことだ。市場に出れば売却できるはずの空き家が数多く放置されている。もちろん実際には、所有者に固有の事情があって売却できないケースもあるのだが、多くの放置空き家は無駄に売却の時機を逸している。

また、これまで相続登記や住所変更登記が義務化されていなかったために、所有者の現住所がわからない空き家も数多くあり、放置空き家の増加の一因となってきた。所有者に連絡を取ろうにも、その空き家の登記情報が適切に更新されていなければ、民間人や民間業者では個人情報の壁に阻まれ追跡が難しく、これもまた空き家の流通を阻害する大きな要因の一つとなっている。

個人情報保護法を緩和しろとまでは言わないが、国も自治体も空き家の解消を目指すのであれば、まずは少しでも所有者に連絡が取りやすい制度を作ることが出来ないものかと思う。商品が正常に流通しない市場では、どんな優れた利活用のプランを立てたところで、結局は絵に描いた餅にすぎないのだ。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。

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