判断ミスで“負動産”に…空き家の相続で一番損をしない方法は?「解体はあくまで最後の手段」(吉川 祐介/ノンフィクション出版)
戦後の宅地開発ラッシュからおよそ半世紀が経過し、かつての「ニュータウン」は世代交代の時期を迎えている。特にバブル期に利用が進んだ住宅地の中には、極端に利便性が低いためにいまだ多くの空き地が残されたまま「限界ニュータウン」と化している所がある。故郷を離れ都市部で新居を購入した方は、やがては住む予定のない実家の相続が発生することになる。
相続が行き詰っている事例
そこで相続人は、自分なりに情報を収集し処分に動くことになるわけだが、その際に初動を誤り、本来は手放せたはずの不動産を、どうにもならない「負動産」にしてしまったケースは枚挙に暇がない。相続が発生するのは限界ニュータウンに限った話ではないが、農村とも異なる市場の特殊性を見極められず行き詰っている事例があまりに多い。
致命的な判断ミスの筆頭が、建物に価値はないと自分一人で判断し、古家を解体して、更地の状態にした後に売却に挑んでしまうこと。昨今は「空き家問題」が取り沙汰され、放置空き家のリスクが周知されてきたこともあり、使わない空き家を放置するなら解体を、と考えてしまうのも無理はない。だがこれは、解体によって土地の固定資産税の減免措置がなくなってしまう上に、空き家以上に売却を困難にしてしまう極めて危険な選択なのである。
今や地方の限界ニュータウンは、いくら安い空き地であっても、新築用地としての需要は少ない。巷でよく言われる「家屋は築後20年で価格がゼロになる」という言説は、もはや都市部でしか通用しない。中古住宅は安ければ安いなりの需要はあるものの、更地は常に供給過多の状況にあり価格崩壊を起こしている。もはや修繕不能なほど朽ち果てた廃屋でもなければ、古家であっても更地より価格が高い。