市販のセルフケアより、皮膚科で安く済む場合も

まず皮脂の分泌を正常にするだけでも1カ月はかかるので、根気強く薬を使う必要があるからです。しかし、アダパレンゲルや過酸化ベンゾイルは塗った時に乾燥してヒリヒリすることや、場合によってはかぶれてしまうこともあります。正しく塗らなければ効果が出ないことなどから、使用をやめてしまう方も少なくありません。

皮膚科に通ってもニキビが治らないという患者さんが受診されることがまれにあります。聞くとアクネ菌を除去する「クリンダマイシンゲル」などの抗生剤の外用薬のみを長期間処方されているケースが多いのですが、それではニキビを根本的に治すことはできません。必ず毛穴の詰まりを改善する薬と併用することが大切です。

また、市販されているニキビ専用の洗顔料を1カ月使い続けても効果がない場合も皮膚科を受診することをおすすめします。悪化することはないと思いますが、完治が遅れ、一生残るニキビ跡になる可能性もあり、費用の面でも保険適用の薬を使ったほうがトータルで安く済むケースが多いからです。

そうやって適切な治療を続けていても治らない場合、最後の手段ともいえる選択肢が「イソトレチノイン」という内服薬です。日本では未承認の薬なので保険適用外となりますが、アメリカのニキビ治療ガイドラインではニキビの第一選択薬となっています。

ニキビ
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困っていても輸入品を買ってはいけない

ただ、重度のニキビや難治性のニキビに効果を発揮する半面、男性、女性共に胎児への影響をはじめ、肝機能異常、高脂血症などが副作用として挙げられています。成長期の患者さんでは身長が伸びなくなるという副作用もあるため、15歳以下のお子さんや成長期で身長が伸びている方は服用もできません。

そのため、皮膚科専門医の指導の下、定期的な血液検査などを行いながら服用する必要があります。服用するタイミングや回数などもクリニックごとの判断となり、私も海外の最新の論文を参考に指示をしています。

最近、当院の患者さんにもいらっしゃったのですが、イソトレチノインについては海外からの個人輸入が問題になっています。米国食品医薬品局(FDA)からも注意喚起が行われており、厚生労働省のサイトにも掲載されています。

正規のものでない偽造品であるリスクだけではありません。実際に当院の患者さんでもイソトレチノインの服用量を変更後、血液検査で肝臓の異常が見られたケースがあるので、医師の指導なく服用量、方法を個人が決めるのは大変危険です。