検察の動きばかりで、法律の欠陥を報じない大手マスコミ
自民党安倍派(清和政策研究会)が開催した政治資金パーティーで、所属議員がノルマを超えてパーティー券を販売した分が議員側に還流され、その分が派閥の収支報告書にも、議員の収支報告書にも記載されず「裏金」にされていた問題。安倍派の裏金は直近5年間で計5億円規模に上るとされ、還流を受けた議員の氏名、裏金を受領した金額が次々と報じられ、安倍派の閣僚4人、副大臣5人は辞任に追い込まれた。
12月19日、東京地検特捜部は、安倍派の事務所と、同様に政治資金パーティーの収入の過少記入の疑いがある二階派(志帥会)の事務所に対する捜索差押を行い、安倍派では歴代事務総長の国会議員の聴取、二階派では、所属国会議員の秘書の聴取が報じられるなど、捜査は新たな局面を迎えている。
私は、かねてから、ネット記事寄稿等で、所属議員個人にわたった「裏金」について、現行法での処罰は困難であること、この「大穴」を塞ぐ政治資金規正法の改正が必要だと訴えてきた。しかしながら、在京の地上波テレビや大手紙の報道は、検察や議員個々人の動きに関するものばかりで、「大穴」の問題を取り上げた社はまったくない。
政治資金規正法の「大穴」というのは、次のようなものだ。
政治資金規正法は裏金を“黙認”している
「裏金の授受」は、受領した事実を記載しない収支報告書を作成・提出する行為が不記載罪・虚偽記入罪などにあたるのであり、授受自体は犯罪にならない。
国会議員の場合、個人の資金管理団体のほかに、自身が代表を務める政党支部があり、そのほかにも複数の関連政治団体があるのが一般的だ。裏金というのは、領収書も渡さず、いずれの団体の政治資金収支報告書にも記載しないことを前提にやりとりする。そういうカネだから、通常は、それが議員ごとに複数ある関連政治団体のどこに帰属するものなのか、などということは考えないで受けとる。
ノルマを超えたパーティー券収入の還流についても、議員側は収支報告書に記載しないよう派閥から指示されて現金で提供され、その「裏金」が議員個人の手元にとどまっている以上、どの団体の収入とすべきか判然としない。どの収支報告書に記載すべきだったのか特定できない以上、虚偽記入罪は成立せず、不可罰となる可能性が高い。