どの小説がいいか。自分と年齢の近い主人公が出てくる作品を選ぶ

最後にぼくにとっての恋愛小説マイ・ベストを挙げるとしたら『荒れた海辺』でしょうか。

兄が妹を愛する話で、ぼくが高校生ぐらいのときにすごく話題になったフランスの小説です。禁じられた愛だから、兄は秘めた思いをずっと抱えて、言い出せない。最後の数ページで一気に時間を経て、老人になった兄へ妹からの手紙が届くのですが、そのシーンが素敵。秘めた恋の強さに、当時、あまり恋愛を知らない高校生や大学生のだれもが“イカレタ”小説です。

好みは人それぞれだから、自分に合った恋愛小説を選べばいいと思うけど、やっぱり自分の年齢に近い主人公が出てくる小説を読むのがいいでしょうね。あまりに年齢がかけ離れた主人公では、つまらないから。年をとるほど、ふつうの恋愛はしなくなるし、老い先短いから過激になる。恋愛はいくつになっても大丈夫っていう勇気も与えられる。

あとは『ガラテイア2.2』のような、人間じゃないものを好きになる話もオススメ。理想像を思い描くところなど、人間では具現化できない究極の恋に昇華されると思えてくる。

人間はダメですよ、欠陥が多いし、機嫌は悪くなるし、文句も言っちゃいますから(笑)。