経済的な面から見ても、ファミリー向けの賃貸物件は単身向けに比べて供給が少ないうえ、広さゆえに家賃相場も高いので、同水準の物件に住み替えるのであれば、低金利下では賃貸で家賃を払い続けるよりも購入して住宅ローンを返済する方が、月々の住居費を抑えられるケースが少なくありません。以上のような理由から出産や子どもの入園・入学前後はマイホーム購入を決意するピーク期といわれます。賃貸から購入にふみ切る家庭にとっては、住宅ローン減税など住居取得関連の支援策も後押しになります。

5年間で1.5倍に急騰した不動産価格

ところが、住宅価格は近年かつてない勢いで高騰しています。不動産価格の全国平均はこの10年あまりでおよそ4割も上昇しているのです。マンションに限れば、2023年4月には約2倍(2010年比192%)にも達しました。

中でもとりわけ高騰が激しいのが、東京を中心とした首都圏です。不動産調査会社の「東京カンテイ」のまとめでは、主にファミリー層向けである70m²の中古マンションの売り出し平均価格は2023年2月に首都圏で4866万円を記録し、5年前の1.5倍近くになっています。大阪や名古屋といった都市圏でも上昇傾向が続いていますが、2020年以降の上昇カーブは特に首都圏で顕著です(東京カンテイ調査結果 中古マンション価格)。

中古以上に高騰している新築マンションが高くて買えないから、と物件探しを中古に切り替える人が増えた結果、中古の需要が高まっているのです。都内のファミリー物件を多く扱う不動産仲介会社イーエム・ラボ代表の榎本佳納子氏は、「10年ほど前は6000万円台だった都心の中古マンションが、今は9000万円台になっているケースもある」といいます。

需要の高い都心部での高騰ぶりはさらに顕著で、東京23区の中古マンションの平均価格は2023年3月以降、70m²あたり7000万円超、千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・渋谷区の都心6区にいたっては平均1億円を超えています(2023年9月現在)。

築20年、30年といった物件でも新築時より数百万円から1000万円以上高く売り出されていたり、リノベーション済のファミリー向け物件であれば築40年超でも1億円以上の値が付いている物件をいくつも見かけます。

購入のハードルがいっそう高くなっているのが新築物件です。首都圏の新築マンションの平均価格は2023年3月に1億4360万円と、単月で初めて1億円を突破しました(不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向」2023年3月)。このときは港区で新築分譲された超高額物件が相場を押し上げた形でしたが、その後も23区を中心に平均価格が1億円前後で推移しています。

新築マンションは供給数が近年減少し続けており、常に需要過多です。加えて世界的な原材料価格の高騰により建築費も上がっているため、価格相場はバブル期を超えるほど高くなっています。