まだ子供は中学受験には早い、という方に、現在発表されている開校予定6校の情報をまとめました。家の近くにできるようなら、要注目!

人材・設備・予算がうまく機能した公立一貫校を探せ!

公立中高一貫校の1期生の大学合格実績が続々と出始め、いよいよ首都圏の私立校は公立校を無視できなくなってきた。いや無視どころか、近くに「公立新設一貫校」ができやしないかと戦々恐々としているかもしれない。

開成を蹴って、小石川へ。女子学院を袖にして、九段へ。そんな受験地図を塗り替えかねないニュースが耳に入るということは、東京都内では私立公立併願の子供が増え、場合によっては偏差値の高いトップ私立校に合格しても公立一貫校を選ぶケースがあるということだ。

首都圏では2011年度は一校も開校がなかったが、今年度は横浜市立南高校附属中学校が開校。募集160人に対し、約1700人が受検し、倍率約11倍だった。そして、来年、13年度には、茨城県古河市に中等教育学校が開校する予定だ。安田教育研究所の安田理氏はこう言う。

「母体は県立総和高校。学力的には芳しい結果を残していませんが、一貫校となって大変身する可能性を十分秘めています。学校が発表した教育プランは極めて綿密な内容で、難関大学研究会、医学部研究会などの大学別の進学研究、大学の研究機関・医療機関と連携した体験活動(先端施設見学、出前講座など)をするといったことが明記されています。この茨城県のケースでもわかるように、公立一貫校は、予算を組み、開校前から専任の教師を配置して念入りにカリキュラムを練ることが多い。だからこそ、1期生から東大合格といった実績が出せるのです」

同じ首都圏エリアでいうと、16年度に開校予定の千葉県柏市の東葛飾高校の一貫校化には、今後数年間の新設校の中でも最大の注目が集まりそうだ。

「東葛飾は、県立千葉、県立船橋と並ぶ千葉の公立御三家校で伝統があります。すでに一貫校化した県立千葉のある地域はJR総武線沿線で、東葛飾はJR常磐線沿線。生徒の奪い合いは少ないと見ています。魅力的なのは、一貫校化に先立ち、高校に14年度から文系・理系コースのほかに医歯薬コースを設置し、少人数指導や医療関係者との交流を通じて進学を後押しする態勢を県も整えていることです」(同)

茨城の古河と千葉の東葛飾の共通点は、自治体がテコ入れに懸命だというところ。

公立一貫校に多くの合格者を出している塾・enaの小学部長・横山晋次氏によれば、「自治体が公立の高等学校の改革を念頭に、中高一貫校に対して人材・設備・予算を投入しているかどうかが、数年後の大学合格実績を決める」という。

横山氏によると、10校の都立一貫校を作った東京都の場合、石原都知事の号令のもと、人気実力とも凋落の一途だった都立高校を改革しようとする中で、優秀な教員と施設費などの予算を付け、それが一定の成果を生んだ。その点、「神奈川県の事情は東京都とは、やや様相を異にする」という(横山氏)。

「たとえば、東京では自校作成されている受検問題を神奈川県立中高一貫校の相模原と平塚では共通のものにしている。では、神奈川の市立一貫校はどうか。「市立南高校附属を今年開校させた横浜市は、東京と同じようなスタンスです。学習塾が主催する保護者向け学校説明会への参加にも積極的で、公立復権に力を入れている印象があります」(横山氏)

しかし、14年度に開校予定の市立川崎は「それなりに強化していますが、生活科学科や福祉科、定時制をそのまま維持していて、進学校という形ではなさそうです」(安田氏)という話もあり、学校選びには説明会に積極的に出向くなど、見極めが必要になりそうだ。

各自治体の教育委員会や母体校、文部科学省ホームページで公表されている資料より作成。

安田氏によると、公立一貫校の開校1年目は、教師だけではなく、生徒も「自分たちがこの学校の歴史を作る」とやる気があるという。また、「都内一貫校で難関大学合格実績を出しているのは、現時点ではほとんどが中学入学組です」(横山氏)という意見もあるから、併設型でも高校からの入学よりは中学から入学したほうがよさそうだ。

合格すれば、安い学費で地元公立校よりハイレベルな授業を受けることができ、先生はもとより、生徒のやる気もある公立中高一貫校。適性検査には準備が必要なうえ、倍率は高いが、地元に新設されるようなら、受検を検討してみる価値は十分あるだろう。

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