投資話以外にも、応用が利く

ちなみに、この「できる条件を提示する」というテクニックは、投資話の勧誘だけでなく、いろいろと応用が利きます。

たとえば、保険の勧誘を受けた際、それを無下に断ることができない場合には、「お金がないから、無理なんです」などと言ってしまうことは多いかと思います。

しかし、それには「お金がない人に万一のことがあれば、遺された家族はどうなりますか? お金のない人こそ、保険に入るべきです。これを機に家計を見直して、保険料を捻出してみませんか?」などと、食いつかれてしまう可能性がありますよね。

その際には、「○○年後に解約返戻金が××万円あれば、加入したい」「保険料が○○円以下で、死亡保険金が××万円あれば、加入したい」など、これなら加入するとの条件を、こちらから提示すればいいわけです。

そしてもちろん、その条件を満たす保険は、誰もが加入したい夢のような保険であることは言うまでもありません。

借金の申し込みにも、うまく対応できる

あと、私はこの「できる条件を提示する」ことで、借金の申し込みをうまく断ったことがあります。

数年前、とある人から、「お金を貸してくれ」と頼まれました。

その人は、無下に断れない関係性の人というよりも、貸してくれるまで引き下がらないような、強引かつ面倒な人でした。

実際、「嫌です」「無理です」と言っても、「なんで?」と理由を聞いてくるような人でして、貸せない(貸したくない)理由を言っても、なんだかんだ言って引き下がりません。

当然、周りからは疎まれていましたが、諸事情があって縁を切ることが難しく、皆、へきえきしておりました。

そして、その人がついに、私のところにも、お金の無心にやってきたのでした。

そして、この場合にも、「できる条件の提示」は、大いに効果を発揮したのでした。

まず、借用書は「公正証書」で作成することを条件としました。

公正証書とは、公証人に作成してもらう書面で、裁判なしで強制執行ができるくらいに非常に強い効力があります。

これは借りた側には相当なプレッシャーで、公正証書の説明をすると、彼は若干難色を示しました。

そして、もし返済できない、返済が遅れるとなれば、その顚末てんまつは、セミナーやコラムなどのネタにさせていただきたいとの条件を出しました。私の仕事が、お金に関する講演や執筆メインなので、そこで体験談として披露させていただいてもよいかと打診したわけです。

これには相当な難色を示しましたが、こちらとしては、それは譲れない条件であることを伝えました。

そして、その2点さえ承諾いただければお金を貸しますよ、と、逆に、こちらから貸し付けの申し出をしているかのような状況にして、相手に判断を委ねる形に持っていきました。

結果、彼から「それなら、もういいです」と、借金申し込みの辞退を引き出すことに成功したわけです。