ラグビーW杯で日本代表が決勝トーナメントに進むために何が求められるのか。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「前回のイングランド戦は敗れたが、体格差をものともしない日本選手のスクラムは世界トップレベルだった。強みとなり自信を深めたスクラムに、日本人が得意としてきたバックスの俊敏な動きが重なれば、決勝トーナメントに進出できるだろう」という――。
1次リーグ・イングランド-日本。試合前に整列する日本代表=2023年9月17日、フランス・ニース
写真=時事通信フォト
1次リーグ・イングランド-日本。試合前に整列する日本代表=2023年9月17日、フランス・ニース

「惜しかった」とは言えないイングランド戦

覚えているだろうか?

4年前の今ごろ、日本はラグビーW杯に沸いていたことを。

「にわかファン」が日本中に増殖し、わけもわからず「ジャッカル」を使い、年末には「ONE TEAM」が流行語大賞に選ばれたことを。

9月9日(日本時間)に開幕したラグビーW杯で、日本代表は、1次リーグD組の2試合を終えて1勝1敗と、決勝トーナメント進出に希望をつないでいる。

日本代表は、18日早朝(日本時間)のイングランド戦に「大一番」と気合を入れていた。

イングランドは世界ランキング6位、日本は14位と、レベルの差はあったものの、前回大会では当時1位だったアイルランドを、前々回にも同3位だった南アフリカを、それぞれ撃破しており、期待が高まっていた。

結果は12対34、さらに4トライ以上で与えられるボーナスポイントも献上しており、「惜しかった」とは言えない。

まずは次のサモア戦に勝たなければ、決勝トーナメントには進めない。

日本のスクラムは世界トップレベル

イングランド戦では、相手の強力なスクラムに対して、まったく負けなかった。高く評価されよう。

フォワードと呼ばれるスクラムを組む8名については、先発メンバーの総重量がイングランドの909キログラムに対して日本は892キログラム、ひとり平均で113.6キロに対し111.5キロと、軽い。

さらに、身長2メートルを超える選手が2人もいるため、スクラムを押す際には、体重に加えて重力がかかる。

しかし、日本のスクラム成功率は85.7%(自チームボール7回のうち6回成功)、イングランドの81.8%を上回った。

数字だけではない。

イングランドがスクラムを慎重に仕掛けてきた様子を見ても、スクラムは通用するどころか、相手を恐れさせたのである。

日本はスクラムで2回ペナルティー(反則)を取られたとはいえ、いずれも微妙な判定であり、前回大会に続き、世界に通用する姿を見せてくれた。

これまでにも「日本選手は体格で劣る」と言われてきたし、今回のイングランド戦を前にしても、どれだけスクラムで耐えられるのか、といった論調が多かったように見える。

結果は、どうだったか。

上に示した数字があらわしているように、体重が少なくても、身長が高くなくても、つまり、体格で劣るとしても、十二分に世界トップレベルだった。

前後半40分ずつ合計80分のうち56分までは、1点差(12-13)で肉薄していた。体格差をものともしない、戦術と戦略、選手たち個々の能力、何よりもチームとしての一体感の賜物にほかならない。

56分までは、今大会のチームスローガン=OUR TEAMを地で行く戦いだった。