サークルや職場で恋愛を避ける驚きの理由
また、誰かがSNSで「先週、A男とB子が手繋いでたよ」といった目撃情報を呟けば、本人たちが交際を秘密にしていても、アッという間に仲間うちで広がってしまいます。あるいは、C子もA男を好きなのに、それを知らずにB子が「A男とデートした」などと呟けば、周りから「アイツ、空気読めない」など、嫌がられたりもするのです。
だからこそ、彼らはいわゆる「コンプライアンス」を気にするうえ、大学のサークルや職場といったコミュニティ内で“和を乱す”恐れがある恋愛を避ける傾向にあります。’22年実施の調査でも、職場恋愛について「(どちらかといえば)したくない」と否定的な20代が、7割弱(65.3%)にのぼりました(Job総研「仕事と恋愛に関する意識調査」)。
フェイストゥフェイスの「リアル恋愛」のリスクが露呈する一方で、リスクが低く、コスパもタイパ(タイム・パフォーマンス/時間対効果)も良い、とされるのが「バーチャル恋愛」、すなわち、近年のデジタル技術によって高度化した「恋愛代替」とも言える存在です。
’18年、当時35歳の男性(近藤顕彦さん)が「初音ミクさん(バーチャルシンガー)」と、約200万円かけて結婚式を挙げたことは、ご存じかもしれません。彼はミクさんへの強い愛を誓っており、その後も、ミクさんの姿を立体ホログラムで筒の中に投影し、AI機能を使って「おはよう」「いってきます」などと簡単な会話を交わしていたそうです(’22年 毎日新聞、1月1日掲載)。
「萌え」と「推し」の決定的な違い
’20年2月以降は、コロナ禍での「ステイホーム」の影響もあって「デジタル化」が一気に進み、著名なアーティストによるオンラインライブや、AIを使ったバーチャルアイドルなどが、次々と登場しました。
こうしたなか、リアル、バーチャルを問わず、特定の「推し(誰かに推薦したいような対象)」を応援する若者も増えています。Z世代ら(女子大生や女子高生)に「『推し』がいますか?」と聞いた調査でも、「いる」の回答は98.4%と、ほぼ全員に及んだほどです(’21年「Trend Catch Project」RooMooN調べ)。
「エンタメ社会学者」の肩書を持ち、早稲田大学ビジネススクールやシンガポール南洋理工大学でも教鞭を執る中山淳雄氏によれば、「推し」から得られる喜びは、以前隆盛を極めた「萌え」よりさらに大きいと考えられる、とのこと。
いわく、「萌え」の時代(’10年ごろまで)は、キャラクターやタレントなどの対象に「内的な(恋愛とも性愛ともつかない)」感情を抱いたのに対し、推しの時代(’11年ごろ~)は、人々が「(対象に)何かを与えたい」「共に何かをしていきたい」という感情を抱くようになったといいます。