「だらだら働く」から給料が上がらない

特に日本と海外の違いは労働時間の長さです。

他の国では15分でやる作業を、日本では無駄なプロセスがあったり細かいところまでこだわったりしてしまうので、1時間も2時間もかかることがあるのです。

これはなぜかと言うと、製造業を除き、日本の多くの産業では費用対効果をきちっと計測をしないからです。計測してしまうと、管理職の無能さがばれてしまうので、なんとなくうやむやにされているのです。

もっと言うと、組織の規模や予算を維持するために、簡単にできることも難しそうに見せたり、短時間でできることも長くかかるように見せかけたりしたほうが得をするわけです。

私の夫は日本のショッピングモールで買い物をしたときに「商品の種類の多さ」に大変驚いていました。そして、「日本は文房具も本も食品も各企業がすさまじい種類を提供し、多様な製品も販売することで消費者を満足させる戦略を取っている。

しかし、その分、高コストで利益率が低くなり、疲弊している」と分析していました。

イギリスでは、そこまで商品の種類は多くなく、新商品も毎年のように発売されたりしません。消費者側も生活必需品などは、いちいち選んだりせず、定番の商品をネットショップで購入し、自動的に定期配送されるようにしています。

いろいろな選択肢の中から選ぶ楽しみがあることもわかりますが、商品の数を増やせば増やすほど、原材料のコストも配送料も宣伝費も余分にかかり、労働時間も長くなっていくのです。

木製のテーブルに食べ物
写真=iStock.com/Natalie Maro
※写真はイメージです

末期のソ連と同じインプットを評価するシステム

日本はアウトプットそのものより「インプットの量=どれだけ頑張ったか」を評価するので、どうしてもそうなってしまうわけです。つまりこれは何と同じかというと、末期のソ連と同じです。

共産主義が崩壊した理由の1つは、インプットに対して効率よくアウトプットを出すことができる仕組みになっていなかったことです。

そして、非常に価値の低いサービスや商品を生み出し続け、成果を出しても報酬はそれほど変わらないので、自分が仕事しているように見せかけたり非効率をわざと維持したりということが常態化していました。

実は日本の多くの組織でこれが起こっているのです。身に覚えのある人もいるのではないでしょうか。高度経済成長期からバブルまでは経済が成長していたので、たとえ価値が低いものでも飛ぶように売れていました。

しかし、今はそうではありません。経済は低調なのに、仕事のやり方はバブルの頃とほとんど変えていない。なので、非効率なままでインプットに見合ったアウトプットが出せていないのです。