12万円だった相続税が、42倍の508万円に
さきほど掲げた東京都内のタワマンを例にとると、乖離率は3.2倍であるから
3720万円×3.2×0.6=7142万円
課税評価額:7142万円-3600万円(基礎控除)=3542万円
相続税:3542万円×20%-200万円=508万円
課税評価額:7142万円-3600万円(基礎控除)=3542万円
相続税:3542万円×20%-200万円=508万円
なんと496万円、42倍もの大増税ということになる。
「父さん(母さん)が死んでも税金は大丈夫」
と思っていた相続予定の人たち(息子や娘)には計算外の増税である。今年中に亡くなれば、想定内だが、まさか「今年死んでくれ」とはならない。相続税対策のやり直しを迫られる世帯が急増するだろう。
タワマン特需でウハウハだった業者にも大打撃
だが、今回の改正で震え上がっているのは富裕層ばかりではない。タワマンを建てまくっているデベロッパーやゼネコンだ。彼らにとってタワマンはとてもおいしい商品だった。考えてもみれば節税を目論む富裕層にとっては時価と評価額の乖離が大きいほど節税になる。つまり価格は「高ければ高いほど」節税効果は大きくなる。買う際に借り入れをすれば借入残額も評価額から差し引けるので、マンション価格が高騰し続けている限り、デベロッパーも金融機関もウハウハの状況だった。
ところが今回の改正によって相続時の評価額が戸建てのそれと変わらないものとなってしまえば、節税という営業にとっての錦の御旗は降ろされることになる。タワマンの販売は好調と言われているが、購入者のうち節税を意識した顧客はどれだけいるだろうか。
販売元のデベロッパーこそ「そんなにいない。ほとんどが実需層」などと口をそろえるが、購入アンケートなどで「節税します」と言って買う客はいないところを鑑みると、一定の割合を占めてきたことは間違いないだろう。
特に地方の富裕層は、節税を意識しながら自らが住む地方の中心都市に建つタワマンを好んで買う傾向がある。やはり自分に馴染みのある立地で買いたいという思惑もあるだろう。