非課税枠は最大9倍、お手本の英国をも超える
今までの話は「実はすごいけど、ちょっと地味な話」でした。では数字的にも大きく変わった派手な部分は何かというと、やはり非課税投資枠の拡大でしょう。新NISAでは今のつみたてNISAを受け継いだ「つみたて投資枠」と、一般NISAを受け継いだ「成長投資枠」の2つができます。
非課税額は、つみたて投資枠が年120万円まで(つみたてNISAの3倍)、成長投資枠が同240万円まで(一般NISAの2倍)と、いきなり2倍・3倍で大きくなっています。16年に一般NISAの非課税枠が20万円だけ大きくなったのとは全く違う規模感です。
さらに驚くべきことに、今は一般NISAとつみたてNISAはどちらか1つを選ぶしかないのですが、新NISAではこの2つの枠が併用できるのです! これは極めて素晴らしい改善ですし、2つの枠の合計では年360万円までも非課税運用できることになり、つみたてNISAの年40万円と比べれば実に9倍になります。
お手本だった英国のISAの非課税枠は2万ポンド(日本円で約348万円、23年6月1日時点)ですから、それをも超えたわけです。「爆発的拡大」と呼んでも差し支えないのではと思っています。詳しくは【図表1】を見てください。
「コア・サテライト戦略」が手軽に実現可能
また、投資の世界には「コア・サテライト戦略」というものがあります。コアは資産の「中核」を成す大事な部分なので、全体の8割程度はリスク商品の中でも比較的安全性の高いもので運用する。一方のサテライトは「衛星」なので、全体の2割程度はコアよりもリスクが高く、その代わりに大きく増える可能性のあるもので運用する。そういう投資戦略のことですが、今回の改善により、個人もこの戦略が手軽に実現できるようになりました。
つまり、つみたて投資枠では金融庁の基準を満たす低コストのインデックス投信などでしっかりと資産の中核を築き、1割とか2割のお金は大きく増えるのを期待して成長投資枠で株を買うのに回す、というやり方です。
このやり方なら、株の運用があまりうまくいかなくても全体ではマイナスの影響は軽減されますし、もしも株価が10倍以上に成長するテンバガーをつかむことに成功したら、全体の運用成績は投信だけの時に比べ一気に良くなります。これまで非課税枠が小さいことや2つが併用できないことでやりにくかったコア・サテライト戦略が、非課税の恩恵を受けながら手軽にできるようになったというのは本当に素晴らしいことだと思います。