安全で、効率的に増産できる「植物工場」

農産物の増産を妨げるのが、天候不順と環境汚染です。冷夏、暖冬、想定外の台風などが農産物の育成を妨げます。また、新興国や後進国では経済成長に伴って、大気汚染や水質汚濁が深刻化しており、農業にはマイナスです。天候不順と環境汚染を避けて食料を増産するためには、「植物工場」での作物栽培が有効です。

植物工場
写真=iStock.com/ASMR
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植物工場とは、農産物を生産する工場のことです。屋外で行なわれる露地栽培とは異なり、工場内の温度、湿度、光、二酸化炭素濃度などを自動制御装置で最適な状態に保ち、種まきから収穫までを計画的に一貫して行ないます。

植物工場のメリットは2つあります。1つ目は安全性が高いこと。外部と遮断されているため病原菌や害虫が侵入できません。そこで、それらを予防・駆除するための農薬が不要です。

2つ目はどこでも栽培ができるということ。農地関連の規制が緩和されつつありますが、それでも農地を購入して農業を始めるには様々な制約があります。

しかし、植物工場ならばどこに作ろうが事業者の自由です。また、敷地が狭くても作物を栽培するトレーを棚状に積み上げれば、多くの野菜を収穫できます。露地栽培に比べて土地の利用効率はきわめて高いのです。

期待が高まる「陸上養殖」

FAO(国連食糧農業機関)の「世界漁業・養殖白書2022」によると、世界では1人当たりの魚介類の消費量が過去60年間で倍増しており、さらに伸び続ける傾向にあります。魚介類の需要が増加しても、海から獲るのは限界があります。それならば養殖すればいいということになりますが、海を利用した養殖で生産量を増やすのは簡単ではありません。

そこで、期待されるのが「陸上養殖」。海に生息する魚介類の養殖を海ではなく陸上で行ないます。屋内の水槽で水質や水温、エサなどを完全にコントロールした状況で魚介類を育てるので、養殖場というよりも「魚製造工場」と呼んだ方が適切かもしれません。

陸上養殖のメリットは3つあります。

1つ目は、外部からの影響を受けずに安定的に魚介類を育てられること。通常の養殖は、海の中に設置されたイケスで魚を育てますが、赤潮の発生などで環境が悪化すれば魚は全滅してしまいます。自然環境の変化だけでなく、タンカーの座礁で重油が流れ込んで、養殖魚に大きな被害が出ることもあります。