相手をよく見ることが何より大事

いきなり結論ですが、①「ほめられた人が『うれしい気持ちになる』こと」はこちらがコントロールできることではありません。

だってそうでしょう。まったくおなじタイミングで、おなじ表現でほめてうれしい子もいれば、そうじゃない子もいます。

赤ちゃんとおなじようにほめられて、喜ぶおじさんなんている?(いるけど)

また、ほめられる「量」が大事な子もいれば「質」が大事な子もいます。

ほめる「量」が優先される子だったら、ひとつひとつのほめるワードにとらわれすぎず、間髪入れずにどんどんほめていきましょう。極端な話、ひとつのアクションのたびにほめるくらいでも構いません。ジャブだけで試合を制すのです。

ほめる「質」が優先される子なら、強弱をつけてほめましょう。ジャブはあくまでもおとりです。基本的にクールにほめつつ、ここぞ! というタイミングで渾身こんしんのストレートを打ち込んでノックダウンを奪いましょう。

好きなキャラクターや有名人がいるならそこを絡めてほめてもいいし、成功したときより失敗したときのチャレンジをほめてほしそうなら、そうしましょう。

ほめられてうれしいポイントは十人十色。「容姿ばかりほめられてきた美人の性格をほめるといい」って、どこかで読んだ恋愛指南本にも書いてありました。

ひとつ気をつけてほしいことがあります。

「ほめる」についてインターネットでちょいと調べれば、「このワードでほめよう!」みたいな「ほめワード」が、ポップコーンのLサイズくらいあふれかえっています。

いいですか、重要なのはなにがなんでもそのワードを使ってほめることじゃありません。大事なのは、その「ほめワード」で、ほめられた人が「うれしい気持ち」になっているかどうかです。

言いかえれば、「ほめワードを使うこと<その子をよく見ること」です。

ここを意識せず、「ほめワードでほめるぞ!」なんて気合を入れてしまうと、「ほめワードを使って上手にほめることのできた自分」に満足しちゃって終了です。

つまり、「ほめる」の目的である「うれしい気持ちになってもらう」が達成されているかは、自分より相手に体重をかけていないと見つけられません。

「早く、短く、具体的に」ほめる

②「ほめた行動を『強める』」には「早く、短く、具体的」な「ほめる」を意識しましょう。

「早く、短く、具体的」でいちばん大事なのは「早く」です。

発達につまずきのある子どもたちは、記憶が苦手だったり、経験をスムーズに積み重ねていくことが苦手だったりします。

だから、子どもたちの行動から時間が空けば空くほど「なんの行動をほめられたの?」とピントがズレていってしまいます。わたしたちが、突然2年前のことをほめられて「はぁ……」ってなるのといっしょです。

だから「望ましい行動をした“瞬間”」です。鉄は熱すぎるうちに打て。「行動」と「ほめる」の時間をなるべく空けずに伝えることを意識しましょう。

そして「短く、具体的」にです。

「このチャーハン、パッラパラッ! くっつきたくてもくっつけないN極とN極、磁石のようなお米やで! 結婚式でも食べたいわ!」

という比喩まみれのグルメレポートではなく、

「このチャーハン、お米の水分を飛ばせてる! 強火で炒めたのがいいね!」

です。

まどろっこしい表現は、子どもたちの「ほめた行動を強める」には向きません。抽象的かつ情報量が多すぎて、理解するのが大変だからです。

短く具体的にほめられることで、自分の「行動」と「ほめられた」が一致すれば、「またやってみよう!」と思ってくれる確率が上がります。そうやって、ほめた行動を「強める」ことができます。

子どもがうれしい気持ちになって、彼らのスキルアップにつながればこっちもうれしい気持ちにしかなりません。世界が平和になります。

「ほめる」の正解なんて簡単に導けません。導いたつもりの正解が、まちがっているかもしれません。合っていたはずの正解が、相手の変化で正解じゃなくなることもしょっちゅうです。

それでも考えるしかありません。何度も何度も、相手を見るしかありません。

「ほめる」ことは「相手をよく見ること」と同義です。

ほめた相手がうれしそうにしてくれたなら、それをできた自分もしっかりほめてくださいね。

幸せな家族
写真=iStock.com/Kiwis
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