3月にイギリスのBBCが、故・ジャニー喜多川氏の、少年への性加害を取り上げたドキュメンタリーを放送した。番組では、過去に被害を受けていたと証言する元ジャニーズJr.の男性らが、今も喜多川氏に感謝し、慕っていると話し、それについてBBCのジャーナリストがグルーミングによるものだと指摘している。性被害の被害者心理に詳しい、上智大学准教授で公認心理師の齋藤梓さんは「自分が信頼し、敬愛する相手から性暴力を受けた場合、相手を悪く思えなかったり、それが暴力だと思いたくないという被害者もおり、それは自然な反応だ。被害を受けた子どもが、その苦しさを一人で抱えるのではなく、適切な支援につながりサポートを受けられるようにしなくてはならない」という――。
※ 今回、先行研究で使われてきた言葉として「性的グルーミング」という用語を使用していますが、「グルーミング」という言葉は、動物の体をケアするなどの意味で使われてきた言葉でもあるため、今後、「性的懐柔」などの言葉に変わる可能性があります。
ジャニー喜多川氏の性加害を取り上げたBBCのドキュメンタリー『Predator: The Secret Scandal of J-Pop』の番組サイト。
とても気付きにくい「性的グルーミング」
このところ日本において、「性的グルーミング」という言葉が知られるようになってきました。「性的グルーミング」とは、子どもをグルーミングしていき(手なずけていき)、性加害をするプロセスで、こうしたプロセスが見られることは、1980年代半ばあたりから、アメリカの研究者を中心としていくつかの論文で言及されています(※1)。1990年代には研究が増え、2000年代からはSNSなどインターネットを利用した性的グルーミングの存在も指摘されています。子どもと親しくなり、信頼を築き、その信頼を利用して子どもに性的な行為をするというプロセスは、昔からずっと存在していました。
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