「2023年で底を打ち、その後着実に回復」という希望
とくに、今回の2023年推計では、出生率が23年の1.23まで大きく低下した後、底を打ち、24年以降は着実に回復するという、やや極端な変動を示している。グラフ内の赤線は2024年でV字となり右上がりの線を描いている。その傾斜はさほど急とは言えないが、このグラフは他のさまざまな予測や政策立案などに大きな影響をもたらす。
23年発表の推計について国立社会保障・人口問題研究所はプレスリリースで、「コロナ感染拡大以前から見られた出生率の低迷を反映し、短期的にはコロナ感染期における婚姻数減少等の影響を受けて低調に推移」としている。しかし、肝心の出生率の反転上昇の要因については、特に何の説明もない。
勝手に類推すれば24年以降に、それ以前の婚姻数や出生数低下の反動が生じることを織り込んだということなのだろう。しかし、果たしてコロナ後の出生数の反動増が、これまでの出生率の下方トレンドを反転上昇させるほどの大きな力を持つものなのだろうか。
日本の人口予測の手法が極めて精緻なものであることは、筆者も以前に参加していた人口問題審議会での議論で承知している。しかし、いくら精緻な予測手法でも、それに用いる出生率などの仮定値に、バイアスがあれば、人口推計の結果にも大きく影響する。
それだけでは済まない。それはすでに始まっている2024年度の年金財政検証にも連動する。
今回の人口推計では、出生率の長期想定値が1.36と、前回推計の1.44から引き下げられたが、それでも現在の出生率(1.33、2020年時点)よりも高い水準となっている。また、前回の倍以上に高まった外国人の入国超過数の想定も、年金財政を支えるプラス要因となるが、果たして長期停滞で円安の日本が、今後も引き続き外国人にとって稼げる国としての魅力を維持できるかあやしいものである。