人間だけが教育で人生を変えられる
人間以外の動物は、生まれたときの地位を、一生超えられません。働き蟻は、死ぬまで働き蟻です(実際には、きわめて低い確率で例外現象があるようですが、事実上、無視できます)。
人間だけが、教育を受けることによって、生まれたときの階級を超えられます。
教育こそが、生まれつきの社会区分を突破できる武器です。貧しい家庭に生まれても、教育の機会を活用することによって能力を高め、多くの可能性を実現することができます。
教育を受ける機会を奪うことは、最も大きな社会悪です。私が留学生だった1960、70年代、アメリカでは人種差別が厳然としてありました。大学には黒人の姿がほとんど見られませんでした。
ところがいま、アメリカ連邦政府などの主要な地位に、黒人が進出しています。彼らは、教育によってその地位を獲得したのです。この点において、アメリカは偉大な社会だと思います。
貧困から脱出する手段を奪われた子供たち
もう何十年も前のことですが、バングラデシュを訪れたとき、首都ダッカで衝撃的な光景を目にしました。
本来であれば学校で勉強していなければならない時間帯に、子供たちが群がって、路上で物乞いをしていたのです。彼らは初等教育を受ける機会を奪われています。
初等教育さえ受けられない彼らに、未来はありません。彼らは、貧しさから脱却する手段を何も持っていません。
彼らの家族は、鉄道敷地内に不法に建てられたバラックに住んでいます。列車は、警笛を鳴らして人々を線路から追い払いながら、のろのろと進んでいます。
こんな場所に住んでいるのは、盛土であるため、洪水が来ても水没しないからなのでしょう。もちろん、電気も水道もありません。病気になっても、病院には行けないでしょう。