D&Iの推進は企業のリスク管理にも寄与
管理職への昇進を希望しない、どちらでもよいと回答した人にその理由を聞いたところ(Q5)、男女ともに「責任が重くなる」と回答した割合が最も高かった。しかし、その割合を見ると男性が約6割、女性が約8割と大差がついた。
この男女差について、白河さんは「女性はどうしてもロールモデルが不足しており、男性よりも管理職の役割を真面目に考える。逆に言えば、管理職責任を重く受け止めている分、男性よりも管理職の適性が高いということでもあります」と分析する。
女性管理職比率を上げることに成功している企業は、管理職について一般社員に情報提供をしていることが多いという。
「管理職の実態について、部下から見える以上の情報を与えることが重要。研修の一環として『管理職体験』をさせるなど、昇進した後の景色を伝えるという試みは、さまざまな企業が取り組んでいます」(白河さん)
育児中の女性には、管理職の責任がさらに重くのしかかる。たとえ意欲はあっても責任感の強さゆえに昇進するのをためらうのも無理はないが、実際に育児と仕事の両立を妨げているものは何だろうか(Q6)。最も回答が多かったのは「緊急時に業務を引き継ぐ担当者がいない」。これは女性だけでなく男性も同様の結果だった。
白河さんは「緊急時というのは、子どものことだけではなく、すべての社員にも起こりうるが、仕事の属人化をそのまま放置している企業がいまだに多いということ」と指摘。
例えば1人で顧客対応をしていると、不祥事なども露見しにくく、「仕事の属人化は、企業のリスク対応として早急に見直さなければなりません」(白河さん)と警告する。
当然のことだが、D&Iの推進は、社員個人の働きやすさのためだけにあるのではない。多様な人材が起こすイノベーション、そして、リスクマネジメントにも大きく寄与する、ということを企業があらためて強く認識すべきなのだ。
イラスト=浜畠かのう