自治体によるお見合いパーティーに冷たい視線を送る米メディア
とはいえ、60歳や70歳を過ぎても働かざるを得ない社会は、決して人間らしい老後を安心して送れる社会ではない。年金改革や少子化対策に期待したいところではあるが、国や地方自治体の施策がどこまで当てにできるかは不明だ。
少なくとも一部の施策は、迷走気味だ。東京、宮城、愛知などでは、政府や公的機関が少子化対策を兼ね、お見合いパーティーの支援に乗り出している。
若者にロマンスの場を与え、長期的には若年人口の増加に寄与したい考えだが、米CBSニュースは冷めた視線を送る。同記事は、「この国の長老政治の指導者たちは、結婚を増やすことが解決策になると信じ込んでいるのだ」と厳しい。
同紙の指摘によると、根本的には若者の経済力を底上げするような政策が提示されない限り、結婚し子供を育てようという意思は生まれにくい。
中央大学の山田昌弘教授(社会学)は同局の取材に応じ、少子化はお見合いイベントで解決できる問題ではないと明言している。収入が不安定な男性が増えており、こうした人々が結婚よりも親との同居を選んでいることが課題なのだと教授は指摘する。
老後生活は自助努力に委ねられている
こうした海外報道は、日本の年金制度の問題を的確に突いている。それは、厚生年金の加入者がいる元会社員世帯と国民年金のみ加入の個人事業主世帯では、受け取れる年金月額には大きな差が生じている点だ。
厚生労働省の2019(令和元)年財政検証結果レポートによると、国民年金(基礎年金)の第1号被保険者は約1500万人に上る。そのうち老後も継続収入が見込める自営業者は2割弱にすぎず、大半が短時間労働者や無職なのが現状だ。
ニューヨーク・タイムズ紙が指摘するように、アメリカで401Kと呼ばれる個人型確定拠出年金(個人で積み立てる私的年金)は日本では広く普及しておらず、公的年金だけでは生活費をカバーできないまま、自助努力に委ねられているのだ。
いつになっても労働を求められる日本の老後のあり方は、海外でも注目されるほどの大きな問題となっている。