富裕層の人物像、暮らしぶりはどんなものか

公務員の募集要項を読んだところ、東京国税局の国税専門官として採用されれば、福岡で国家公務員として働くよりも、月給が3万〜4万円ほど高いことを知ったのです。

「この収入であれば、なんとか奨学金を返せる」と考えたわけです。

金銭的な事情で人生の大きな決断を下した私は、「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と漠然と考えてきました。そして、「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったのです。

結果として、この考えに間違いはありませんでした。

億単位の資産をもつ富裕層も、その人生をたどれば、仕事をして、倹約に努め、地道に資産を蓄えてきた人ばかりです。なにか特殊なことをしたというよりは、節度をもって生活をした結果として、金銭的な余裕をもつに至った。そのようにして人生の選択肢を増やしてきた人が富裕層の大半だと、私は理解しています。

国税職員のなかでも相続税を担当するのは1割ほどですから、情報が表に出てくることはほとんどありません。私が10年ほど携わった相続税調査が、ほかの税金の調査と明らかに違うのは、個人のプライベートに踏み込むことが非常に多いという点です。

「どのようにして巨額の財産を築いたのか?」という観点で調査をするため、亡くなった方の職業や収入はもちろん、個人的な趣味や交友関係といったことにも目を向けます。この仕事を通じて私は、ほとんど表に出ることのない富裕層の家計や暮らしぶりなどの“リアル”を知ったのです。

大量の札束の3Dイラスト
写真=iStock.com/Alicja Nowakowska
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資産10億円でも傷だらけの軽自動車に乗る⁉

相続税調査の対象となるのは、日本のなかでも、ごくひと握りの人に限られています。現在は税制改正を受けて、日本人の年間死亡者の約10%が相続税の申告をしていますが、私が税務調査をしていた頃は約4%にとどまっていました。

しかも、相続税を申告したすべての人が税務調査の対象となるわけではありません。基本的には、財産が多い人ほど調査対象となる可能性が高く、その意味で私は日本のトップクラスの富裕層の“リアル”を知ることができたと思っています。

そうした気づきを、私が運営しているYouTubeチャンネル『フリーランスの生活防衛チャンネル』で「【お金のリアル】税務職員が見た、富裕層の共通点(投資・仕事・生活)」というタイトルで公開しました。