新聞記者を辞める人が増えている。今年1月に毎日新聞を辞めて、フリーランスとなった宮原健太さんは「半数以上がニュースの出所を気にしないという調査結果がある。これではいくら苦労して記事を出してもメディアは報われない。報道で稼いでいくために、ユーチューバーなど個人の活動にシフトすることを決めた」という――。
積み重ねて置かれた新聞
写真=iStock.com/Aslan Alphan
※写真はイメージです

8年弱の新聞記者人生に終止符を打った

新聞業界は斜陽産業と言われて久しい。デジタル化に伴い紙の発行部数は減っていき、一方でネット上での有料会員獲得は伸び悩んでいる。ページビューを稼ぐことによって生じる広告収入では新聞社を支えることができず、記者の人員は年々縮小されている。

それでも報道は社会で何が起きているかを世の中で共有するために必要不可欠であり、全国に取材網を張り巡らせている新聞社の役割は大きい。

何を隠そう、私もそのような考えから、日が陰る新聞社の中で記者人生を送ってきた1人だ。

どうすれば報道で稼ぎ、新聞業界を立て直せるか……。新たなチャレンジが必要だと感じ、現役新聞記者としては極めて珍しいYouTuberデビューも果たした。

しかし、長い歴史があるが故に、新聞社は従来型の報道を続けることからなかなか脱却できていない。

今も記者たちは睡眠時間を削って取材先に食い込み、必死の思いで特ダネを取ってきている。しかし、そのニュースはあっという間に情報の海の中に消えてしまい、会社に十分な利益として返ってきているとは言い難い。

こうした構造の中で記者としてもがき続けるよりも、退職して自分の力で走っていったほうが新しい報道の形を切り開けるのではないか。そんな思いで、8年弱の記者生活に終止符を打った。

では、どうすれば報道で稼ぐことができるか、業界はどのように変わっていくべきなのか、その分析を私が退職して何をしようとしているかも含めて述べたいと思う。

10年間で発行部数は3分の2まで減った

まず、現在の新聞業界の置かれている状況について見ていきたい。

日本新聞協会によると、スポーツ紙も入れた新聞の発行部数は2022年は約3084万部であり、これは10年前の2012年の約4777万部から3分の2に縮小したことになる。さらに減り幅は年を追うごとに多くなっており、2021年からの減り幅は約218万部となった。現在のペースが続けば15年後には紙の新聞がなくなってしまうこととなり、紙の新聞は衰退どころか消滅の危機に瀕している。

ただ、紙の新聞がなくなっていくのは仕方ないと考えている。本や雑誌なども電子媒体化が進んでいる。紙離れを止めることは難しいだろう。問題は、紙の発行部数が減っていく代わりにネット上で新聞各社が収益を上げられていないことにある。

新聞各社は、紙の衰退に伴い、ネット上での情報発信にも力を入れている。ニュースアプリなどで話題になっている記事も、元をたどれば新聞社であることも多い。一定の閲覧数を稼げれば広告収入も得ることができる。しかし、主な収益源は有料会員の購読料だ。その獲得は芳しくない。一体なぜなのか。