節約の落とし穴

お金を使わずに暮らすというのは、「あるもので満足しましょう」ということではありません。

お金の節約をしようとしたとき、ここはよくハマる落とし穴だと思います。

「あるものでも十分に幸せ」「お金がなくても幸せ」というのは、そう思い込もうとしている可能性を疑ったほうがいいかもしれません。つまりは、本当はそこに欲望があるのに見ないフリをしているだけかもしれないということです。

大事なことは、欲望をなかったことにするのではなく、自分にとって本当に大切なことならちゃんとお金を使うことです。

人間にとって欲望を抱くことは、極めて自然なことだと思います。欲のない人間なんていません。欲を消すことだってできません。

「欲しいものもない。やりたいこともない」というのは、叶えられないならいっそのことなかったことにしたほうがマシ。そう思っているだけにすぎません。

厳しい生活費に落ち込む日本人女性
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

そもそも欲望というのは、自分の内側から生まれたものと、他人に刺激されて生まれたものの2種類があります。

テレビ番組を見たり、SNSを眺めたり、ウィンドウショッピングをしたりする中で刺激された欲望は、時間が経つにつれて薄れていくものです。これは欲望をなかったことにしているのではなく、それが他人に刺激されただけの欲望だからです。

服は厳選した13着のみを保有

一方で、自分の内側から湧いた欲望というのは、ずっとなくなりません。それを中途半端にして満足しようとしたり、そもそもなかったことにしようとしたりすると、「本当は自分にとって大切なものなのに……」と、脳がずっと苦痛を感じ続けることになります。

それでは豊かに暮らすことはできず、それどころか、その苦痛を消すために本来必要なかった浪費も新たに必要になってしまいます。

だからこそ僕たちは、本当に大切なことには一時的にお金がかかったとしても、欲望をしっかり満たしたほうがいいと思っています。

たとえば、僕にとって大切なもののひとつは、「服」でした。

自分が好きな服や着心地のいい服を身に着けている瞬間は、やっぱり気分がいいものです。

逆に、買った値段が高かったからと無理やり袖を通したり、サイズが合っていなかったり、おしゃれを優先して体が疲れる服を身に着けていたりすると、その時間は心地の悪いものになります。

そのため、まずは気に入っていない服をすべて手放してしまいました。その上で、本当に自分が気に入った服だけを厳選して買い替えることにしたわけです。

今現在僕の持っている服は、街に出るための服や部屋で過ごすための服も全部合わせて13着だけです。靴は革靴も入れて、全部で4足です。