※本稿は、なにおれ『31歳、夫婦2人、月13万円で、自分らしく暮らす。』(大和出版)の一部を再編集したものです。
「夫婦で月13万円」の内訳
僕は3年ほど時間をかけて、お金をかけずに楽しく暮らす方法を模索してきました。
それこそが、やりたくないことから逃れる最良の手段だと思ったからです。
結果的に、現在は月13万円の生活費で妻と2人暮らしをしています。
まずは、そのおおまかな生活費の内訳を紹介します。
毎月おおよそこのくらいの金額で安定しています。
正確にいえば、奨学金の返済も毎月15000円あります。ただ、一括返済できるだけの貯金があっても、あえて一括返済せずに毎月払うようにしているので、生活費からは除外して考えています。
では、それぞれの支出の詳細をもう少し掘り下げて紹介していきます。
まずは家賃について。僕たちは地方の1LDKの賃貸マンションに住んでいます。
それにしても月32000円と安くすんでいるのは、妻の会社からの家賃補助があるからです。
「家賃補助があるなんてずるい」と怒られてしまいそうですが、生活費に占める住居費の比率は多くなるので、選択肢は広く考えるようにしています。家賃補助のある会社に転職することも、その選択肢のひとつでした。
そのため僕たちは現在、地元を離れて縁もゆかりもない土地に暮らしています。馴染みのある地元で住居費がたくさんかかる状態と、全く知らない土地だけど住居費を低く抑えられる状態であれば、僕たちは後者のほうが豊かだと思っています。
そして、今後も住居費にはお金をかけるつもりはありません。転居が必要になる前から、「どうすればより住居費を抑えつつ、より快適に暮らせるだろう」とふだんから話し合っています。
田んぼが広がる地方に住みながら車は持たず
また、駅から15分も歩けば田んぼが広がる地方に僕たちは住んでいますが、自動車は持っていません。これで自動車の維持費は0円です。
車を持たない代わりに、自転車を2台持ち、駅前の駐輪場(月額2900円)を借りています。自転車に乗る時間が少しでも楽しくなるようにと、ネット通販で、2万円で買ったスポーツタイプのミニベロを愛用しています。
水道光熱費は季節によって振れ幅がありますが、合計で10000円ほどです。
水道電気ガスの節約はストレスのわりに節約効果も小さいので、特に節約は意識していません。ただし、そもそも家電自体を減らしたり、照明はLED電球に換えたりなど、払わなくてもいいお金は1円も払わないようにしています。
通信費は、僕が楽天モバイル(月額3400円)、妻がマイネオ(月額1600円)を契約しています。
自宅用に光回線やWi-Fiは契約しておらず、楽天モバイルの回線をテザリングしてパソコンでもネットを使っています。回線が遅すぎて使い物にならないときもありますが、むしろ程よくスマホから離れられて気に入っています。そのため、通信費は2人のスマホ代の合計5000円だけです。
食費は2人で週5000円
ふだん口にする食事にかかるコストは、毎月20000円ほどになります。
週末にまとめて食材を買って、僕が平日5日分のおかずを作り置きしています。そのおかずは、妻が会社に持っていくお弁当のおかずにも、毎日の夕食のおかずにもなります。
必然的に平日は同じようなものばかりを食べていますが、その代わりに、休日には少し贅沢な料理を作ることが多いです。
これで平日分の食事代がおおよそ週4000円で、休日の食事代が1000円ほど。
合計1週間5000円が4週間で、毎月20000円というわけです。
娯楽費については、休日には2人でよく出かけています。出かけるといっても地方で娯楽も少ないので、自転車を30分ほど漕いでカフェに行き、お互い好きな本を読んだり、お喋りをしたりしています。仕事をすることもよくあります。
自宅での食生活を楽しめるように環境を整えてきたので、外食をすることもほとんどありません。ですので、毎月の娯楽費はカフェ代の月10000円ほどですんでいます。
個人の支出はマックの100円コーヒーと書籍代くらい
最後に、個人的な支出についてです。
僕のほうはほとんどお金を使うことはなく、お金を使うことといえば、毎日仕事場として使っているマクドナルドの100円コーヒー代と書籍代くらいです。
妻のほうは会社員として働いているので、職場の飲み会があったり、身なりを整えたりすることにお金を使っています。これで、2人合計で30000円ほどになります。
ちなみにですが、医療保険と生命保険には加入していません。
ケガや病気などの一時的な支出に備えるだけの現金は銀行に残しています。
もしものときには社会保険の高額療養費制度もあるので、日頃から健康的な食事と体を動かすことだけは意識して、それ以上は備えすぎない方針です。
また、生命保険にも加入していません。
共働きでお互いが経済的に自立しているので、もしどちらかが欠けることがあっても生活ができなくなることもありません。また、社会保険に加入しているかぎりは遺族年金もあるので、子どもがいない現時点では生命保険は不要と判断しています。
「質素」と「粗末」の決定的な違い
僕たちは少ないお金で暮らすことを、「質素な暮らし」と呼んでいます。
質素という言葉の意味を辞書で引くと、「飾りけがない」「贅沢しない」といった意味になるようです。贅沢せずにつつましく暮らしているなんて聞くと、粗末な暮らしをイメージするかもしれません。
ですが、「質素」と「粗末」は決定的に違います。
粗末とは物事を雑に扱うことです。一方、質素とは贅沢しないがゆえに、あるものを大切にすることです。つまり、真逆なのです。
たとえば、粗末な食事というのは、茹でたうどんを適当な皿に盛り付けるだけの食事をイメージしてください。
逆に、質素な食事とは、ただ茹でただけのうどんでも、見た目がきれいに見えるように好きな器にていねいに盛り付け、テーブルにはランチョンマットをシワなく敷き、温かいお茶を淹れた湯呑みとお箸もきれいに並べる。そんな食事です。
同じ茹でただけのうどんでも、その食を大切にしようとするかどうか。この違いが、質素と粗末の違いです。
厳密に意味合いが正しいかはわかりませんが、少なくとも僕たちは、質素と粗末をそう区別しています。そしていうまでもなく、粗末に暮らすよりも質素に暮らすほうが豊かさを感じられます。
日常の中に豊かさを感じる最大のコツ
ありふれた日常の中に豊かさを感じる最大のコツは、「自分が大切にしたいものだけを大切に扱うこと」。これだけだと思っています。
なんでもかんでも大切にしようといっているのではありません。むしろ、逆です。
なんでもかんでも大切にしてはいけません。
大切にしたいものだけを、大切にすることです。
自分が大切にしたいと思えないものをていねいに扱ったところで、心は満たされません。それどころか、どうでもいいものまで大切にしようとかけた時間や手間は、苦痛の種になります。それでは結局、自分が苦しくなるだけです。
だからこそ、自分が本当に大切にしたいものだけを大切にする。このように発想することを、僕たちは質素な暮らしだと思っています。
もし、「ていねいに扱う」「大切に扱う」ということを面倒だと感じるのなら、その対象は自分たちにとって大切なものではないと思っていいです。
僕たちが日々の暮らしの中で実践しているのは、大切にしたいと思えないものは容赦なく手放し、毎日触れていたいと思えるものだけを残すこと。
一緒にいることでむしろ寂しさを感じるような人間関係からは距離を置き、困っているときは力になりたいと思える人とだけ連絡を取るようにすること。
苦しさしか感じない家事はやめてしまい、心地よさを感じられる家事だけをすることです。
そこには贅沢さや華やかさはないかもしれません。
ただ、自分たちにとって大切なものだけを大切にする質素な暮らしは、とても豊かな暮らし方だと思っています。
節約の落とし穴
お金を使わずに暮らすというのは、「あるもので満足しましょう」ということではありません。
お金の節約をしようとしたとき、ここはよくハマる落とし穴だと思います。
「あるものでも十分に幸せ」「お金がなくても幸せ」というのは、そう思い込もうとしている可能性を疑ったほうがいいかもしれません。つまりは、本当はそこに欲望があるのに見ないフリをしているだけかもしれないということです。
大事なことは、欲望をなかったことにするのではなく、自分にとって本当に大切なことならちゃんとお金を使うことです。
人間にとって欲望を抱くことは、極めて自然なことだと思います。欲のない人間なんていません。欲を消すことだってできません。
「欲しいものもない。やりたいこともない」というのは、叶えられないならいっそのことなかったことにしたほうがマシ。そう思っているだけにすぎません。
そもそも欲望というのは、自分の内側から生まれたものと、他人に刺激されて生まれたものの2種類があります。
テレビ番組を見たり、SNSを眺めたり、ウィンドウショッピングをしたりする中で刺激された欲望は、時間が経つにつれて薄れていくものです。これは欲望をなかったことにしているのではなく、それが他人に刺激されただけの欲望だからです。
服は厳選した13着のみを保有
一方で、自分の内側から湧いた欲望というのは、ずっとなくなりません。それを中途半端にして満足しようとしたり、そもそもなかったことにしようとしたりすると、「本当は自分にとって大切なものなのに……」と、脳がずっと苦痛を感じ続けることになります。
それでは豊かに暮らすことはできず、それどころか、その苦痛を消すために本来必要なかった浪費も新たに必要になってしまいます。
だからこそ僕たちは、本当に大切なことには一時的にお金がかかったとしても、欲望をしっかり満たしたほうがいいと思っています。
たとえば、僕にとって大切なもののひとつは、「服」でした。
自分が好きな服や着心地のいい服を身に着けている瞬間は、やっぱり気分がいいものです。
逆に、買った値段が高かったからと無理やり袖を通したり、サイズが合っていなかったり、おしゃれを優先して体が疲れる服を身に着けていたりすると、その時間は心地の悪いものになります。
そのため、まずは気に入っていない服をすべて手放してしまいました。その上で、本当に自分が気に入った服だけを厳選して買い替えることにしたわけです。
今現在僕の持っている服は、街に出るための服や部屋で過ごすための服も全部合わせて13着だけです。靴は革靴も入れて、全部で4足です。
毎年服に使うお金は1万円だけ
持っている服や靴の数こそ少ないですが、どのアイテムを選んでも自分にとって最高のコーディネートになります。そのため、自分の欲望にフタをしている感覚は一切ありません。
それに、1着何万円もするような服ばかりを買うわけでもありません。明らかに自分の身の丈に合わない服でも選ばないかぎりは、必要な服をすべて一新したとしても、家計を大きく圧迫することにはならないはずです。
実際のところ、一時的には数万円のお金を使うことになりましたが、いまでは毎年服に使うお金は1万円だけです。買い替えるものといえば、1枚1500円のTシャツ数枚と、1足5000円のスニーカーだけになります。もちろん、これらはすべてお気に入りのアイテムです。
結果的に、お気に入りの服だけを毎日身に着けているのに、ほとんど服にお金がかからない生活ができるようになっていました。