モラハラは夫婦間だけではない
ここで、「モラ夫だけでなく、モラ妻もいるではないか」と憤慨することは、全く生産的ではない。
誤解を恐れずに言えば、日本の文化自体に、立場が強いものが弱いものに対してモラハラをするという、モラハラ要素がある。それが、学校や職場のイジメ、毒親、教育虐待、パワハラ、セクハラ、アカハラ(アカデミックハラスメント)、カスハラ(カスタマーハラスメント)、モンペ(モンスターペアレント)、教室虐待など、さまざまな場面で現れ、問題化している。
私たちは、その時の立場によって、容易に被害者にもなり、加害者にもなる。そのことを率直に認め、自らの加害者性に向き合うことが大切だと思う。
精神的な攻撃で心身が傷ついてしまう
まず、怒り、怒鳴り、非難するという「攻撃」は、身体的、物理的攻撃と同様、DVであることを知るべきだ。人間の脳は、物理的攻撃と精神的攻撃を明確に区別できないらしい。精神的攻撃を受けると「心が痛む」が、物理的攻撃による被害を表す「痛み」という言葉が精神的被害にも用いられているのは、まさにその表れだろう。
動物は、攻撃を受けると、逃げる。仮に逃げられないと闘う。逃げられず、闘っても勝ち目が全くないと、仮死状態になって攻撃をやり過ごす。これは、動物の本能的反応である。
夫から攻撃を受けても、社会的諸規範から、簡単には逃げられない。「夫相手に闘っても勝ち目はない。逃げられず、闘えない」とすれば、仮死状態になるしかない。
実際、妻たちの証言を聞いていると、モラハラを受け始めると、手足が冷たくなり、頭が働かなくなり、記憶力も悪くなるなどの諸症状が自覚される事例は少なくない。つらさ、悲しさなど、何も感じなくなるという「感情の平坦化」も、精神的攻撃を受けたことが原因である。
精神的攻撃(モラハラ)により、妻の心身は傷つき、感情が平坦化する。何年かはやり過ごせるものの、いずれ、心身の限界が来る。