『プロジェクトX』『知ってるつもり⁈』を見せられた

根田さんは、霊感を使った形で、畏怖・困惑させられて契約させられたことがわかります。これは教団が使う常套手段といえます。

「ビデオセンターでは、『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』(2000年3月~2005年12月にNHK放映)や『知ってるつもり?!』(1989年10月~2002年3月に日本テレビ系列放映)など、テレビで放映されたものを多くみせられました。創造原理、堕落論、復帰原理などの講義ビデオもみましたが、どちらかというと、教義の講義内容よりも、3分の2以上は一般に放送されているドキュメンタリーものでしたね。知らなかったものを学べるという感じで通っていました」

教団は過去に放送されたテレビの映像を流して、それを利用して教義につなげようとしてきます。おそらく信者になった人は、こうした番組を見ている人も多いはずです。当然、テレビ局が流した映像の著作権などは払っていないでしょう。また許諾申請しても局が認めるはずがありません。結局、教団は著作権に反するということにもお構いなしで、勝手に受講生に有料の学習をさせる手法は、筆者の信者時代と変わりなく行われているようです。

リモコンを手にチャンネルを変えながらテレビ視聴
写真=iStock.com/Yuzuru Gima
※写真はイメージです

根田さんは、ビデオセンターAにしばらく通った後に2日間セミナーに参加します。そこではイエスキリストの歩みなど、修練所に泊まり込み生講義を受けます。ここで教えられる内容は統一教会の教えですが、教団名は告げられていません。

筆者の信者時代(1990年代前後)、2日間セミナーの後は泊まり込みで夜に生講義を行う「ライフトレーニング」に参加させるようになっていました。しかし根田さんによると「次も、近くにある別のビデオセンターBに通い受講をしました。ただ最初のビデオセンターAとは教える内容が逆転していて、3分の2ほどが教義を学ぶ講義ビデオになっていました」といいます。

その先には4日間セミナーが待っています。

ここでは、再臨のメシヤとしての文鮮明教祖の苦難の歩みを教えることがメインになります。それゆえ、教祖や教団名はどこかで教えなければなりません。その辺りを聞いてみると、「再臨のメシヤは文鮮明」とはいわれたものの、驚くことに「統一教会の名前は出てきませんでした」というのです。

「この人がメシヤなんだ。半信半疑な感じで聞いていました。すでに受講料も払っているので、辞めるのも、もったいないと思い、4日間セミナーに参加しました。しかしそれが命取りでした」と振り返ります。この時点で、根田さんは宗教団体に自分がどっぷり浸かっている認識がなかったそうです。