脱原発志向の世論が高まる中、大手新聞の論調が「原発推進」と「脱原発」で大きく分かれている。

原発推進を鮮明にしているのは、読売新聞を筆頭に、産経新聞、日本経済新聞の3紙。一方、東京中日新聞を筆頭に朝日新聞、毎日新聞の3紙が脱原発を志向している。

原発推進派の旗頭の読売は、電力不足による産業空洞化などを強調、関西電力大飯原発の再稼働についても、先頭に立って旗を振ってきた。

「読売の元社主、故・正力松太郎氏は、戦後、原子力の平和利用を唱えて総選挙に立候補して当選し、“原子力の父”と呼ばれた人物」(科学ジャーナリスト)だから、それも当然。昨年の原発事故の1カ月後には、早くも内部の勉強会で原発推進堅持の方針を固めている。読売新聞社社員が言う。

「昨年4月14日、読売東京本社で原発勉強会が開かれました。勉強会には読売グループのドン、ナベツネこと渡邉恒雄会長・主筆以下の主だった幹部に加え、日本テレビの社長ら約200人が参加。同会の最後に、ナベツネさんが“やっぱり原発しかねえなあ”と大声で一言。ドンの一言で読売の社論は事実上決まったようなものです」

一方、産経新聞の事情はどうか。

「原発事故後しばらくは、経済部を中心に紙面で東電を批判することに異論が出ていた。今も、脱原発論者はなるべく紙面に登場させないことが暗黙の合意になっている」(同社社員)

別の社員からは「東京電力は産経の大口の広告スポンサーだった。それも紙面構成に影響したのでは」という声も聞こえてくる。

日経新聞も社説などで原発推進を唱えているが、「脱原発論者の編集委員らにも記事を書かせており、比較的柔軟」(日経若手社員)という。

「これに対し、東京中日新聞は脱原発を鮮明に打ち出していて、経済産業省や東電から“左翼新聞”“過激派の新聞”などと毛嫌いされている。朝日も脱原発に舵を切り、毎日も月曜日朝刊コラムで継続的に脱原発を訴えている。朝日、毎日も政府首脳から左翼呼ばわりされている」(科学ジャーナリスト)

政府など当事者による不毛な決めつけは願い下げだが、新聞同士が紙面で意見を戦わせるのは大歓迎だ。