小林麻央さんのように子どもたちに接したい
みどりさんは、病気になるずっと前から、乳がんのため2017年に亡くなったフリーキャスター・小林麻央さんのことを尊敬していた。
小林さんは、がんの進行にともない、次第に弱っていく様子も含めて、自身の姿を子どもたちにありのままに見せていた。「なんて強い人なんだろう」。ブログやテレビ番組を通して、みどりさんは小林さんの姿勢にとても共感をおぼえた。
みどりさん自身もがんに襲われることになるとは想像だにしていなかったが、それでも娘たちに対しては小林さんのように振る舞えたらと思っていた。自分の病気について、隠すつもりはもともとなかった。
ただ、がんという病気について、どのタイミングで、どのように伝えるのがいいのかは、よくわかっていなかった。だから、近藤さんの具体的なアドバイスがありがたかった。
話すならいまだ
夕方近く、みどりさんとこうめいさんが帰宅すると、もっちゃん、こっちゃんはもう幼稚園から帰っていて、自宅2階のリビングで長いすに座り、テーブルの上でお絵かきをしていた。
みどりさんが「何の絵かいてるのー?」と聞くと、こっちゃんはそれには答えず、「どこ行ってたの?」と質問してきた。
あ、話すならいまだ。そう思い、みどりさんが説明を始めた。
「きょう、病院に行ってきたよ。ママの体の中に、がんっていう、悪い病気がいて、それをやっつけるための注射をしたんだよ」
2人は、はじめは説明を聞いていた。
だがやがて、いつものようにママに抱きついた。一度の説明ですぐに理解することは難しいようだった。ただ、「がんという、悪い病気とママはたたかっている」ということだけは伝わった気がした。
この日以降も、みどりさんたちは病院に通うたびに、「がんの治療に行ってきたよ」と娘たちに繰り返し、伝えるようになった。
みどりさん自身は、2人にどこまで伝わっているのか、それほど気にはしていないようだった。
2人に伝わっていても、伝わっていなくても、構わない。それよりも、私はいま、自分にできることをする。それは、2人に思いきり愛情を伝えることだ。みどりさんは、そんな気持ちでいるようだった。