テントに10万円、焚き火台やテーブル、ストーブや料理道具にも3~5万円単位でお金が飛んで行く。こだわり始めるとテントも1種類では事足りず、用途や人数に応じて複数欲しくなる。キャンプに行って道具を自慢し合い、隣のテントを覗けば新たに欲しいものができるという無限ループ。ここ数年、それを繰り返すうちに「自分は何をやっているのだろう」という気持ちになったという。
「キャンプ道具はかさばるし、家に道具の置き場もなくなってきた。何より“自然の中で楽しむ”という目的が、いつの間にか、身の丈に合わない消費活動に変わっていたなと思う」(Aさん)
道具の見栄もあれば、スタイルや作法を張り合うマウンティングもある。東京都在住のBさん(37・男性)は、キャンプブームに後押しされる形で、昨年からキャンプを始めた一人だ。慌ただしい日常から離れ、自然の中に身を置く気持ち良さにハマり、週末のたびに家族や友人とともに近隣のキャンプ場に通う。
だが、ある出来事をきっかけに、キャンプ場で人の目が気になるようになった。それは、思わく渋滞にはまってキャンプ場への到着が遅くなった時のこと。周囲から遅れをとってテントを立て始めたが、「早く設営しないと、日が暮れてしまう」と気持ちが焦り、いつも以上に設営にもたついてしまった。その時、遠くのテントから「あ~初心者さんかな。手つきが慣れてないね」「慣れてないなら、もっと早く来なくちゃ」「いや、そうじゃなくて、先にテントを広げてから作業しないと……」などと、声が聞こえてきた。
声をたどると、明らかに自分が会話のタネにされている。他人の不幸は蜜の味じゃないが、日暮れに差し掛かる時間に、設営にもたつく自分の姿が、格好の“酒の肴”にされていた。
その後、しばらくマイペースに楽しみたいと、ソロキャンプで無料のキャンプ場に行ったが、そこで思わぬ“説教”を受ける羽目に。慣れた手つきでテントを設営し、リラックスして自然に溶け込んでいる50~60代の男性と隣り合った。