きっかけは「不純な動機」

――ジョンの話は衝撃的でしたか。

はい。なにが衝撃だったかというと、ジョンの話の内容よりも、隣でプレゼンテーションを聞いていたお兄さんが、クレジットカードでその場で気軽に2500ドル(当時30万円)の寄付にサインしたのです。まず、クレジットカードで寄付をするという感覚がなかったので、それだけで驚きましたし、ジョンの話は数字が矢継ぎ早に出てきて、目標が明確。NPO界のマイクロソフトになるというコンセプトが面白いと思った。それまで私のイメージしていた途上国支援をするボランティア団体とは大きく違っていて、こういう仕組みもあるのか、と。

――たぶん、海外青年協力隊のようなイメージ?

そうなんです。華やかな場所で、参加者も参加していて楽しい。なおかつそれが寄付になるパーティーなんて初めての経験でした。しかも、パーティーはすべてボランティアのサポーターが仕切り、会場もパーティーのワインもイベントにかかる経費はすべて大使館や企業、個人からの協賛や寄付で賄われていて、収益は全額寄付するという。お金にクリーンで徹底している。「こういうやりかたもあるのか」と衝撃を受けました。

私はなにか面白いものに出会ったときに、“伝えたい”という気持ちが即座に働くほうなのですが、「あ、これなら私、役に立てるかもしれない。この活動なら広めたい」と感じたんです。

――この会合のあと、すぐに「PRをやりたい」と伝えたのですか。

はい、伝えました。私に協力できることがあれば、と。ジョンの本の日本語版を出版する構想を聞いて、「広報やります。出版記念パーティー、ぜひやりたいです」などと、まだ原書も読んでないにも関わらず伝えたのを覚えています。

――パーティーに参加を決めたときから、なにかできることがあったらこの団体を手伝おうと思っていたのですか。

いえ、特に考えていませんでした。しかも参加した理由は、会場が南アフリカ大使公邸だったから、という不純なものですし。

――では、このパーティーの間の3時間くらいでやろうと思った。

はい、思いましたね。

――なるほど。そのとき、松丸さんに時間的余裕はあったのですか。

このころはまだ出版社に務めていましたが、朝・夜の時間や週末は空いていました。具体的にはジョンの来日の際、メディアのセッティングを行いました。まだ本業があったので、日中の取材立会いはできなかったですね。