認知症の人が敷地内で自由に行きたいところに行き、暮らしたいように暮らすことができる――。2020年、フランスにそんな施設「ランド・アルツハイマー村」が開設された。新型コロナウイルスの影響でしばらく関係者以外の見学が許されなかったが、今年の5月から、再び見学が可能に。「高齢期のお金を考える会」を主宰するファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんらが、6月に日本人としては初めて見学してきたという。その体験を聞いた。
「ランド・アルツハイマー村(以下、アルツハイマー村)」は、フランス南部、パリから約3時間半のダクスという町にある、認知症の人だけが暮らす施設だ。約5ヘクタール(東京ドームとほぼ同じ広さ)の敷地に認知症の人約120人が生活し、医療介護スタッフ(医師、看護師含む)約120人とボランティア約120人がサポートにあたる。
運営は国がおこなっており、入居者が支払う費用は月額2000ユーロ(約28万円・1ユーロ140円で換算した場合)が基本となるが、所得による軽減措置がある。負担が一番少ない人では、月に3万円台の費用で入居できている。
村には戸建ての居住棟のほか、レストランやミニスーパー、図書館、美容院、イベント用の会場、外部の人も利用できるクリニックなどがある。村はもともとあった池などの自然の景観を生かしたつくりで、畑もある。つまり、敷地内につくられた村が、ひとつの大きな介護施設というわけだ。
このアルツハイマー村は、オランダの認知症村「hogeweyk(ホグウェイ)」を参考にしてつくられた。ホグウェイは、オランダ・アムステルダムにある、重度の認知症の人だけが生活する村としてつくられた介護施設。もともとは一般的な介護施設だったが、2009年に新たな理念を掲げて再スタートした。その理念とは、認知症の人が、できる限りその人のライフスタイルを維持する生活ができること。こちらは民間が運営している。