学校選び
公教育の質がいい学区に引っ越し。名門私立は年間600万円も!
日本の幼稚園年長に相当するキンダーから高校までが義務教育で、公立なら高校まで無試験で入学できて学費もかからない。そんなアメリカでは、年間4万〜5万ドルかかる私立小中に進学する家庭はごくわずか。
米国教育統計センターの調査(2017年)によると、私立小中に在籍する子どもの割合は、全米で10%となっている。
「私立には幼小中高一貫校も多く、私立に通う子は幼稚園から私立、公立に通う子はずっと公立という場合が多い」(川崎さん)
ただ、公立学校のカリキュラムやプログラムは、州や自治体ごとに大きく変わる。一般的には、家賃の高いエリアほど公教育の質が高い。
シリコンバレー一帯では不動産価格もすさまじく高く、スタンフォード大学があるパロアルト市では、いわゆる1LDKの平均家賃が約40万円。その分、公教育のレベルもカリフォルニア州随一とされ、パロアルト高校は全米の公立高校ランキングで州トップの50位(Niche “2022 Best Private High Schools in America”)にランクインしている。
それでも、シリコンバレーでは11年時点で約15%の子どもが私立校に通っていた。11年はリーマンショックの影響で学費の高い私立を断念する家庭が続出していた時期なので、今はこの割合はもっと高いだろう。
カリフォルニア州は財政難で、他州と比べて公教育の質が低いという前提はあるものの、年間5万ドルを超える学費を払ってでも子どもに最高レベルの教育を受けさせたいと願う親心が表れている。
「カトリックやユダヤ教などの男女別学伝統校、大学受験準備に特化した進学校など、選択肢も豊富にあり」(川崎さん)それぞれの家庭の方針に沿って学校選びができる。
語学教育も、学校選びの重要な要素だ。例えばヌエーバでは、中高の選択科目に日本語や中国語がある。川崎さんによると、進学や将来の仕事に役立てたいというよりは、子ども自らが目標を高く設定し、「難しい言語を学ぶことで知的にチャレンジしたい」(川崎さん)という理由で選ぶケースが多いという。
ギフテッド教育
特異的な才能がある子を伸ばす仕組みとは?
アメリカでは、知性や創造性、特定の学問分野や芸術分野、スポーツなどにおいて極めて特異的な能力を発揮する子どもを「Gifted(ギフテッド:天から能力を与えられたという意味)」と呼び、その才能を発掘し伸ばしていく仕組みが整っている。
石角さんは「親が子どもの才能に気づき、ギフテッドの可能性を信じて、その才能を開花させる環境を整えてあげること」がギフテッド教育の出発点だと言う。この点は、革新的なことが好きなシリコンバレーの親たちの得意分野のようで、ギフテッド向けの私立一貫校が盛況だ。
川崎さんが教壇に立っていたヌエーバは幼小中高一貫校で、全米私立高校ランキング9位(Niche “2022 Best Private High Schools in America”)の老舗ギフテッド校として名をはせている。次世代のリーダー育成を目指している同校の教育理念は、3歳児に課す入学試験にも表れている。
まず、最初の関門である知能テストを突破した3歳児を、10人1組のグループに分けて1時間自由に遊ばせる。そして、
・ 初対面の子ども同士で対話ができているか
・ 子ども同士でいざこざが起きた際に、他の子どもに働きかけて話し合いを持つなど、問題解決に向けて対処できているか
などを複数の教員がチェックし、合格者を決めるそう。
こうした入学試験を勝ち抜いて入学した子どもたちは、学業面に優れているだけでなく、それぞれがリーダーシップや音楽、スポーツ分野での才能を発揮する。卒業後は多くが地元のスタンフォード大学や東部の名門大学に進学し、物理や工学、法律など専門性を深めていく。なかには、ミュージカル俳優やメジャーリーガーになる生徒もいるという。