立憲は野党の中で「頭一つ抜け出した存在」と言えたはずだった
改めて昨秋の衆院選から総括してみたい。
立憲は「公示前議席を減らした」というが、同党が前回の2017年衆院選で獲得したのは、わずか55議席。野党第1党としては戦後最少の議席数だった。そこから同党は、選挙を経ずに国民民主党の大部分や社民党の一部の合流を経て所属議員を増やし、昨秋の衆院選の公示前には自らの基礎体力以上に議員数が膨らんでいた。それが選挙を経たことで、地力に欠ける党の基礎体力並みの議席数に落ち着いただけのことだ。
一方の日本維新の会について、メディアは「大躍進」というが、同党が2017年の衆院選で獲得したのは、わずか11議席。この選挙は小池百合子東京都知事率いる「希望の党」が存在していた特殊事情があり、維新は党の基礎体力を大きく下回る惨敗を喫していた。昨年の衆院選では、希望の党の消滅で従来の維新支持層が回帰し、元の勢力を取り戻したに過ぎない。
公示前議席を減らしたとは言え、立憲の野党第1党としての力は、衆院の議席という「リアルパワー」の面では、民主党が下野した2012年以降で最も強いものとなっていた。
立憲が2021年の衆院選で獲得した96議席は、民主党の下野後の野党第1党の獲得議席としては最も多い。また、野党第2党の日本維新の会は衆院選で議席を伸ばしたが、野党第1党の立憲と、第2党の維新との議席差(55議席)は、民主党下野後の選挙では最も大きい。
昨年の衆院選は「多弱」と言われた野党の中で立憲が頭一つ抜け出し、野党の中核として定着し始めたとの評価が可能な結果だった。
泉執行部の経験の浅さが招いた失敗
それでもメディアは、公示前議席との比較という1点に着目して「立憲惨敗、維新躍進」という印象を演出し続け、「敗因」の十分な分析もないまま「批判や抵抗ばかりの姿勢」「共産党との『共闘』」に容赦ない批判を立憲に浴びせ続けた。発足したばかりの泉執行部は、こうした批判に対抗するには経験が浅過ぎた。自ら選挙結果を冷静に分析する前に、必要以上に「惨敗」に振って評価してしまい、それが彼らの党改革を「提案型野党」という間違った方向に向かわせてしまった。