まずキャプテンがレフェリー役になって状況設定をします。たとえば敵陣何メートル、右のタッチラインから何メートルのところにボールがあり、敵の状況はこう。フォワードは何人がラックに入っている。バックスラインは浅い、というような設定です。

それをみんなが頭に思い描いてから、「ラックからボールが外へ出た」「9番が10番にパス」「10番が外に開いて13番に飛ばしパス」などと声を出し合い、頭の中で30分ほど試合を進めていくのです。役割分担を共有することが目的でした。

余談ですが、当時はまだ根性練習が幅を利かせていましたから、こんなふうにジョギングしながらイメージトレーニングをしていると、OBからは「何やってんだ。しゃべりながら、だらだら走るんじゃない!」と文句を言われました(笑)。

重視したのは、現場を預かる課長クラスの職員

このように役割分担を徹底させる考え方は、大阪府知事や大阪市長として役所組織に入ったときも大いに役立ちました。

役所はそもそも同質性が求められる組織です。しかし僕は、「前例踏襲ではない行政をやろう」と訴えてその中へ飛び込んだのです。ですから、前例にとらわれない職員の「個人の力」が必要になるのです。

といっても、役所の仕事はどう考えても1人ですべてできるものではなく、チームワークが必須です。そのチームワークに当たって、役割分担の共通認識を持つ必要を感じました。

大阪府庁は1万人、大阪市役所だと3万8000人という巨大組織です。そういう組織を動かすために、分単位で打ち合わせや会議が続きます。役所の中では日常的に数百人と接していたのです。

そこで痛感したのが、役割分担の大事さです。実際に職員に接しているうちに職員個々の個性もある程度わかってきますが、多くは人事部の助けを借りて、打ち合わせや会議のメンバーを選定していきました。

僕が重視したのは、現場を預かる課長クラスの職員です。

通常トップと日常的に接するのは部長以上の幹部ですが、実際に状況を把握しているのは課長であり、知事や市長が部長に質問すると部長は脇に控えている課長に質問することになります。だったら、一番わかっている職員(課長)と直接話をすれば効率的だと考えたのです。

ただし、指揮命令系統を崩すと組織がきちんと動かなくなります。そのため、責任者である部長や局長には来てもらいますが、あくまでも僕と話をするのは課長という形にしました。

それだけでも、役所においては前例破りですから「えっ! 課長と知事(市長)が直接会議するんですか?」と驚かれましたよ(笑)。

(YouTube配信中)

(撮影=的野弘路)
【関連記事】
仕事ができる人は知っている…「よろしくお願いします」より効果的なメールの締めのフレーズ
ダメな上司ほど最初に使ってしまう…「部下との1対1」で避けたほうがいい"ある言葉"
すでに十数回の大統領暗殺を阻止…プーチンをイラつかせるイギリス特殊部隊「SAS」の仕事ぶり
「どんな人なのかが一発でわかる」銀座のママが初対面で必ず確認する"身体の部位"【2021下半期BEST5】
「溶けないアイス」で大逆転…10年赤字の老舗和菓子店を救った「元ギャル女将」のアイデア