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役所でも役立ったラグビーのイメージトレーニング

まず「チームワーク」と「個性」を相反するものと捉えるとしたら、それは違うと思います。両者は相反するものではなく、バランスを取りつつ補完していくことが大事です。

高度成長期の日本企業みたいに、目標がほぼ1つに定まっていて、そこへ向かって突進していけばいいなら、チームワークを優先して個性がないメンバーを集めればいい。この考え方に立つなら組織運営は簡単です。

でも、このような「チームプレーだけ」の価値観では、集団に付加価値がつきにくい、あるいは特色が出せないという問題に突き当たります。高度成長期の日本企業にしたって、実際には「個性がない」というより、メンバーの個性の部分を無視して、チームプレーだけをさせてきたということでしょう。

しかも、今は「何を目指せばいいのかわからない」時代です。最初から目標があるのではなく、むしろ目標を新しくつくり上げる必要があるのです。個性ある目標や方向性をつくり出すためには、メンバー個々の個性や能力、キャラクター、価値観といったものが大事になってきているのです。

とはいえ、チームプレーは要らない、個人の力だけで戦えばいいというわけではありません。「個人の力だけ」で戦っていける世界は限られています。時代が変わっても、ほとんどの仕事でチームワークは必要なのです。

コーチが選手に話
写真=iStock.com/South_agency
※写真はイメージです

たとえば僕の仕事でも、個人の力、個人のスキルだけを前面に出すことはありますが、現実には複数の人たちとチームプレーで進めていくことが大半です。

では、個人の能力を生かしつつ、チームで勝つにはどうしたらいいでしょうか。目指すべき方向性(目標)を定め、それぞれの役割分担を明確化する。そのうえで、目標達成のプロセスをみんなで共有する、というのがチームワークの基本です。

その際、個性豊かなメンバーに集まってもらう場合にとりわけ重要なのが、役割分担を決めることです。均一ではなく個性が際立っている人たちならば、全員に同じ役割を求めるわけにはいきませんから。

そこで参考になるのがチームスポーツであるラグビーです。ラグビーの15人の選手たちは、ポジションによって求められる役割が違い、体重や身長、スピードやスキルも異なります。そんな個性的な選手たちが束ねられ、勝利という目標に向かってチームで戦うのです。

今から35年前に僕たちの北野高校ラグビー部では、役割分担を徹底させるためにイメージトレーニングを取り入れました。高校ラグビー部としては当時最先端だったと思います。

イメージトレーニングとは、それぞれのポジションの選手が、試合のときにこういう状況になったらこう動き、次はこう動くということを想定し、全員がイメージを共有していくことです。みんなでグラウンドのまわりをジョギングしながら、頭の中で試合をするのです。