問題は祖父が亡くなる前に使い切ること

この制度の場合、贈与する側は年配の方です。好江さんの場合、大学4年の授業料でしたが、大学1年時に4年分をまとめて贈与するケースもあります。もし卒業するまでに祖父が亡くなったら、どうなるのでしょうか?

制度が延長された2021年4月以降、祖父が亡くなった時点で残った分は課税されるようになりました。これは相続税の対象です。しかも、祖父から孫への相続税は、祖父から子に比べ、相続税の税額は2割増しです。まだ大学に納めていない分は課税対象になるので気を付けましょう。

高卒の好江さんは「息子が大学を卒業する姿。それを見るのが夢でした」と私に礼を言いました。晴れて2022年3月、好江さんは息子さんの卒業式を見届けたのです。

この特例は両親が結婚している場合だけでなく、すでに離婚している場合も適用されます。そのことが好江さん親子を救ったのです。

親ガチャが無理なら祖父ガチャを使う

2021年の流行語大賞のトップ10に選出された「親ガチャ」。実家の貧富によって子どもの教育、結婚、就職などが左右されますが、残念ながら、子どもはどの親のもとに産まれてくるのかを選ぶことはできません。

玩具やゲームの「ガチャガチャ」のように本人の努力より運の要素の方が強いという意味です。息子さんが引き当てたのは親ガチャではなく祖父ガチャ。今回の制度はガチャの確率(祖父の説得率)を上げるのに有効です。

さらに追い風であるのは遺産の不動産から現金への流れです。国税庁によると10年間で不動産と現金の割合は逆転。具体的にいうと平成21年は不動産が55%。現預金や有価証券が34%でしたが、平成30年には不動産が40%。現預金や有価証券が48%です。

祖父に対して「実家を売って大学の授業料を払って」とは、さすがに頼みにくいですが、一般的に年配の方の財産は不動産から現金へ切り替わっています。すぐに現金化できる財産なら祖父も承諾しやすいです。その財産は祖父から子、そして孫と受け継がれます。遅かれ早かれ孫に渡るなら今すぐ欲しいと説得しましょう。

コロナ前の2019年に離婚した夫婦は20万8000組。一方、コロナ後の2020年は約19万3000組とほぼ横ばい(厚生労働省の人口動態統計)。コロナ禍で金銭的に厳しい母子家庭は多いです。祖父の資力を想像し、今回の方法を使えそうなら、参考にしてみてください。

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