86年、参院委員会でのSPEEDI“初お目見得”

原子力防災指針には、「SPEEDIの情報や事故状況などを基に、50ミリシーベルト以上の被曝が予測される場合に避難指示を出す」と明記されている。今回の事故でそれが活用されなかったことに対して、緩い追及しかできない政府の事故調査・検証委員会でさえ、11年12月26日にまとめた中間報告で「(SPEEDIの)予測情報が提供されていれば、より適切な避難経路などを選ぶことができた」として、安全規制担当省庁の処断を批判している。

国民が被曝せずにすむはずのSPEEDIシステムで安全対策が講じられていたにもかかわらず、それを適切に活用しなかった政府は、「住民への公開を予定した法令が存在しなかった」などという理由にもならない寝ぼけた言い訳で多くの国民を被曝させた。今、その責任逃れをタライ回しで押し付け合っている。

放射性物質拡散予測システム=SPEEDIは、原子力発電所などで事故が発生した場合、放出源・地形・気象条件、放射性物質の大気中濃度など、地理的・数値的なデータに基づき、危険エリアや被曝線量などの予測計算を行うシステムである。日本原子力研究所が1980年から研究・開発を始め、第二世代の世界版SPEEDIを経て、最近では第三世代SPEEDI-MPの開発が進められていた。開発には、平成21年度までに累計116億円の税金が投じられ、その後の予算づけもなされていた。