ストリンガー会長と「四銃士」若手役員

個性派揃いの社長を輩出してきたのがソニー。創業者のひとりである盛田昭夫氏は大阪大学卒の国際的なビジネスマン、大賀典雄氏は東京芸大、ベルリン国立芸大卒業の指揮者で、出井伸之氏は早稲田大学政経学部卒、欧州帰りでソニーのデジタル化を大きく推進した経歴を持つ。

ソニーのハワード・ストリンガー会長兼社長は、元ジャーナリスト。(PANA通信=写真)

現トップのハワード・ストリンガー会長兼社長は英オックスフォード大卒、米CBS放送のプロデューサー、ジャーナリストとしても実績があり、エンターテインメント分野を熟知する。ハード分野の知識を補っていたのが、前社長の中鉢良治氏(東北大学大学院工学研究科博士課程修了)だが、09年4月の新経営体制で副会長となった。

ソニーブランドは、世界中に浸透しており、AV機器から、映画、音楽、金融、ゲーム、ネットワークなど幅広い分野を統括するソニーの社長、会長には高い国際能力とともに、ハードとソフトの未来を予測する力がないと務まらない。逆に言えば、デジタル化が進行する出井社長までは、「SONY」のブランドをいかに世界に広めるかが大切だったとも言える。

しばらくストリンガー体制は続くと思われるが、ストリンガー会長と思考を共有し、戦略を具現化する「テクノクラート」が重宝されている。目下、ストリンガー会長を支えるのが、「四銃士」と言われる役員で、吉岡浩執行役副社長(京都大学工学部卒)、平井一夫執行役EVP(国際基督教大学教養学部卒)、石田佳久業務執行役SVP、鈴木国正業務執行役SVPだ。

もともと、ソニーは技術志向が強く、「国際派」ではなくても技術をしっかり理解した役員も存在した。ただ、ハードとソフトというデジタル化時代に対応できる役員として四銃士の中から、次期社長が就任すると思われる。いずれも、海外経験が豊富で英語が堪能のグローバル志向の合理主義者。4人中3人が、40代から役員を経験し、ソニーの主流であるエレクトロニクスではなく、IT、通信、ゲームの分野からの登用である。

サラリーマンにとって「出世」は最大の関心事だ。しかし、どの企業でも、役員への昇格の道は、非常に厳しく、会社の規模が大きくなればなるほど至難の業であるのは言うまでもない。ただ年を追うごとに、役員への道は、確実に狭くなり、競争は激しくなっている。サラリーマンにとって、役員に選ばれることは、それまでの仕事が評価された一つの証明だが、巡り合わせも含めて多少の運、不運があることは避けられない。

※すべて雑誌掲載当時

(的野弘路=撮影 PANA通信=写真)