海外生産のシェアが7割近いグローバル企業のホンダでは、役員を選ぶ条件として日産ほど語学力を重視しないが、現役員陣の中で、海外駐在を経験していないのは、開発部門出身で技術系の2人の執行役員だけだ。

ホンダの伊東孝紳社長は、主流のエンジン部門出身以外から初めて選ばれた。

青木哲会長(東京外国語大学卒)はイタリア、伊東孝紳社長(京都大学大学院工学研究科修了)は米国、近藤広一副社長(山口大学文理学部卒)はブラジルなどの赴任経験があり、役員になってもさらにステップアップを目指すために国際感覚を磨くことが必須の条件だ。ただ、「創業者の本田宗一郎が元気な時代とは様変わり。会社の規模が大きくなるにつれて、破天荒なサプライズ人事が少なく、順当な線で選ばれることが多い」(ホンダOB)と危機感を抱く声もある。ざっくばらんに、自由にモノがいえる企業風土を、後戻りさせないでほしいというのである。

確かに最近の役員陣の顔ぶれと高卒役員も存在した昔のそれとを比べると、バランスの取れたエリート集団であるがゆえに、「ホンダらしさ」が失われている面があることも否めない。ホンダに詳しい取引先の経営者は「人間というのは、失敗して初めていろんなことが見えてくる。失敗しないできた人はいつか大きな失敗をする可能性があり、大変危険」と指摘する。もちろん、同じ失敗を繰り返すような人間は論外だが、失敗の反省、教訓を次の仕事にプラスに生かせる人物こそ役に立つというのである。