ガラスバッジで外部被ばくを把握する

外部被ばく量の把握も大切です。空間放射線量率を測ることで、放射性物質の分布の様子と、それによる外部被ばく量を推測することができます。線量計には、厳密な方法で測定する10万円を超える機器から、1万円未満と比較的安価で手に入れやすい家庭用の線量率計まで、今ではさまざまな製品があります。

外部被ばく量の実測で主に用いられる方法は、ガラスバッジ(クイクセルバッジ)方式と呼ばれています。親指ほどの大きさのガラスバッジを胸などに身につけて、感光体(フィルム)の感光の程度で、人体が受ける外部被ばく量を実測するものです。先日、二本松の新築マンションで放射性物質が混入したコンクリートが使用された問題が明らかになったのも、この方法の測定値がきっかけでした。

昨夏以降、この方式により、福島県の各自治体(市町村)で、主に学校に通う子どもたちが受けた外部被ばく量が測定されました。2011年9月に中学生以下の子どもと妊婦さん36,478人を対象に測定した福島市の例では、「64.4%の対象者が1カ月あたり0.1mSv」(福島民友2011/11/2)でした。当時の福島市の空間線量率は、概ね毎時1.0μSv程度でしたので、この線量率から単純計算した1カ月あたりの1.0×24×30=720μSv(0.72mSv)という値と、0.1mSvの間に7倍の開きがあることがわかります。空間線量率からの計算値と実測値とは大きく離れることが多く、その離れ方は、バッジをつけていた人の居住地や、行動パターン、例えば、どのくらいの時間屋外に居て、何をしていたか、ということによって変わります。

気持ちの面でも、一度でも実測し、値を知ると、それだけでずいぶんと落ち着いてものごとを考えることができるようになるものです。このような長所も含め、バッジを用いた実測を行っておくことは意義があると思います。多くの子どもたちがバッジをつけてみたのですから、行動パターンと実測値の関係についてよく分析しておけば、バッジによる実測の意義はより大きくなります。

空間放射線量率の測定は自治体も盛んに行っていて、報道されています。個人で測っている方も少なくないことでしょう。確かに空間線量率は重要なのですが、これだけが強調されてしまうのはバランスが悪いと考えています。4象限のうち、残りの3つも同様に重要です。