北京冬季五輪で人気を博した公式マスコット「ビン・ドゥンドゥン」。そのデザインにはさまざまな狙いがある。東京女子大学の家永真幸准教授は「現在の中国はパンダだけではなく科学技術、宇宙、未来といった要素によって象徴されるのだ、という設計思想が込められている。受け身だったかつての『パンダ外交』から大きな変化が見られる」という――。
公式マスコット「ビン・ドゥンドゥン」の人形
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
公式マスコット「ビン・ドゥンドゥン」の人形

マスコットのグッズが中国で大売れしている

2022年2月4日から20日にかけて開催された北京冬季五輪の会期中、公式マスコット「ビン・ドゥンドゥン」のグッズが中国国内で人気を博したことが盛んに報じられた。日本テレビのアナウンサーが大のマスコットファンであることが中国のSNSで話題になり、現地メディアに取り上げられたことは、日本でもニュースになった。さらにネット上では、会場の着ぐるみマスコットが「しゃべったら声がおじさんだった」「飛び跳ねた拍子に足がもげた」などの「醜聞」も広く出回った。

ビン・ドゥンドゥンは、ずんどうなパンダが透明の殻に覆われたキャラクターである。今大会では、競技終了後のフラワーセレモニーで上位選手にぬいぐるみが贈呈されたため、世界中のスポーツファンがその映像を目にしたことだろう。

北京で行われるスポーツ国際大会でパンダがマスコットとなるのは、ビン・ドゥンドゥンが初めてではない。1990年アジア競技大会のマスコットは「パンパン(盼盼)」というパンダであり、2008年夏季五輪では5人組マスコット「フーワー(福娃)」メンバーの1人がパンダの「ジンジン(晶晶)」であった。では、なぜ今回もまた、パンダが大会の顔に抜擢されたのだろうか。そもそも、なぜ選ばれるのはいつもパンダなのだろうか。