日本経済に深刻な影響がやってくる

現在、ウクライナ軍とロシア軍の激しい戦闘が続く中、わが国の経済にも深刻な負の影響が及ぶ恐れが高まっている。欧米諸国やわが国は結束して、ロシア経済を孤立させるべく厳しい制裁を科している。一連の制裁の中でも、ロシアの主要銀行を国際金融のネットワークであるSWIFTから除外することや、米欧などがロシア中央銀行の資産を凍結するインパクトは非常に大きい。

下落した日経平均株価を示す電光ボード=2022年3月2日、東京都中央区
写真=時事通信フォト
下落した日経平均株価を示す電光ボード=2022年3月2日、東京都中央区

これらの制裁によって、ロシアは事実上、通貨ルーブルの価値を防衛することが難しくなった。ロシアの複数の銀行は国際的な資金決済システムから排除される。ロシアの大手銀行が資金繰り逼迫に陥り破綻懸念が高まっていることは世界の金融市場にマイナスだ。

それは、自由主義諸国とロシアの分断を意味する。グローバルに張り巡らされたサプライチェーンの寸断は深刻化し、今後、世界経済のブロック化が進むだろう。エネルギー資源価格の上昇などで、世界全体で物価の上昇圧力はこれまで以上に高まることが予想される。世界経済全体で成長率が低下する可能性も高まっている。

自動車産業の健闘などで、景気の緩やかな持ち直しを実現してきたわが国を取り巻く世界情勢の厳しさは高まっている。最悪の場合、わが国では景気の減速と物価の上昇の同時進行という事態が現実となるかもしれない。ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界の政治・経済・安全保障の状況が大きく変化することだろう。わが国経済も厳しい状況に追い込まれる可能性は否定できない。

エネルギー、穀物、鉱物資源などが上昇する

ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界全体でインフレ懸念がこれまで以上に上昇している。米国の債券市場では主要投資家のインフレ予想を示す指標の一つである5年のブレークイーブン・インフレ率が3%を超えた。今後の企業業績への懸念の高まりから、米国の債券市場ではジャンク級社債の国債利回りに対する上乗せ金利幅(信用スプレッド)が拡大している(社債価格は下落)。

ウクライナとロシアはグローバル経済にとって重要なエネルギー、鉱物資源や穀物の供給者としての役割を果たした。天然ガスに関して、ロシアは世界最大の輸出国だ。EUは天然ガスの4割をロシアからのパイプラインを通して輸入している。税関のデータによると2020年のわが国の液化天然ガス輸入において、ロシアはオーストラリア、マレーシア、カタールに次ぐ第4位であり、シェアは7.8%だった。2020年の小麦輸出に関してロシアは世界トップ、ウクライナは第5位だった。