孤独でいることは、実はチャンス

しかし仏教は、そんな私たちに「孤独」に歩むことの大切さも教えているのです。『スッタニパータ』という経典の中に、次のような一節が説かれています。

「われらは実に朋友を得る幸せを褒め称える。自分よりも勝れ、あるいは等しい朋友には、親しみ近づくべきである。このような朋友を得ることができなければ、罪過つみとがのない生活を楽しんで、さいつののようにただ独り歩め」

ここでいう勝れた朋友とは、善友のことです。犀の角とは、孤独のことです。お釈迦さまは、修行僧に向かって「善友を求めよ」と説かれました。しかし善友が得られないのなら、「孤独に歩め」と鼓舞されたのです。

一見矛盾するような教えですが、ここに真理が説かれています。修行僧とは、高い志をもって道を成そうと歩む求道者です。寂しいからといって、寂しさを埋めたり、暇をつぶすために、他人と交われば、振り回されたり、甘えたり、頼ったりして、自立心や集中力を削がれ、目標を見失ってしまいます。

もしあなたが「孤独」を感じているならば、それはチャンスであることを知ってください。

自分と向き合い、自分の成すべきことに、自分が成したいことに、時間とエネルギーを費やすのです。

犀の角のように、ただ独り歩む。するとあなたの心技体が向上します。

心技体の向上とは、人格の向上です。あなたの人格が向上すれば、類は友を呼んで、そこに自然と善友が現れてくるのです。

美しい黄昏を見つめながら山の上に立つ女性
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