元より人口が減少傾向にあり、資源も持たない日本は海外から人やモノを受け入れない限り、活路を見いだすことはできない。より長い時間軸で見通した場合、「安い日本」に魅力を覚えて海外から人・物・カネが集まってくるようになれば、いずれ経済・物価情勢も上向く目も出てくるであろう。

しかし、国内に対しては行動制限、海外に対しては入国制限を決め込んでしまっていては需要が喚起される道が全く見いだせない。

横断歩道で信号が青に変わるのを待っている男女
写真=iStock.com/monzenmachi
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「経済より命」の大きすぎる代償

本コラムへの寄稿でも繰り返し論じている点ではあるが、「経済より命」という大義の下で取られている根拠薄弱な防疫政策の結果が低成長ゆえの低物価につながり、REERの下落に直結しているという事実を直視する必要がある。

2月にはコロナ分科会が出口戦略の可能性を示唆したが、筆者は国政選挙を控える現政権の下ではまず無理だろうという印象を持っていた。

案の定、2月17日、岸田首相は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを現在の「2類相当」からインフルエンザ並みの「5類」へ引き下げるかどうかを問われ、「このタイミングで分類を変更するのは現実的ではない」と退けた。

高確率で第6波の記憶も新しいうちに第7波を懸念して類似の騒ぎが起きる可能性が非常に高いと言わざるを得ない。

そうした政策姿勢が高支持率に直結する事実はもはや動かしようがないが、結果として他国との成長率や物価の格差が一段と開くことにも気づいてもらいたい。

耳あたりの良い防疫政策より、経済の正常化を

欧米は経済正常化を優先するのだから、元々日本を凌駕していた物価はさらに上離れする。当面は金利差拡大を理由とした名目ベースの円安は元より、物価差拡大を理由とした実質ベースの円安圧力も時々刻々と蓄積することが見えている。

上述したように、資源を筆頭に、あらゆるシーンで日本が諸外国に対して「買い負け」するという事実が伝えられる可能性も高い。

「経済より命」という短期的には耳あたりの良い防疫政策によって日本経済が中長期的には失うものは非常に大きいように思えてならないが、人口動態上、目先のリスクを回避することに徹する高齢化社会では受け入れるしかない運命なのだろうか。

世論は難しいとしても、金融市場のアラーム機能(端的には円安)を通じて為政者が危機感を覚え、経済正常化に舵を切ることを切望する。

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