働き方、マネジメント、組織カルチャーを変えられるか

「あなたは60歳になりました。お疲れさまでした。定年です。これからは、潤沢な退職金と年金でご家族ともども幸せな老後をお過ごしください。ごきげんよう」

しかし、今の時代はどうでしょう? VUCAと呼ばれる、環境の変化が激しい時代です。先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代です。今までの勝ちパターンが通用しなくなってきました。組織の中や過去に答えを見出しにくい。人材の流動性も高まり、多様化も高年齢化も進んでいます。「男性正社員オンリー」「24時間戦える人オンリー」では新規事業の創出やイノベーション、それどころか既存の事業を継続的に運営することさえも困難になるでしょう。

実際、本書執筆時点の2021年9月時点においても、新型コロナウイルスの蔓延がなかなか収束しない状況下において、テレワークやデジタルマーケティングのような新しいやり方を取り入れ目まぐるしく成長する企業と、旧態依然のやり方を手放せずに業績を悪化させる企業の格差が広がっています。

「変われない組織」
「成長しない組織」
「今までの勝ちパターンから脱却できない組織」

そのような組織に対し、未来志向の人、健全に成長したい人ほど危機感を高め、ストレスを抱えるようになります。それが職場のギスギスにつながります。私たちは、旧態依然のマネジメントや働き方、いや組織カルチャーまでをもそろそろ見直す必要があるのです。

2.旧態依然の職場環境

職場環境も職場の空気に少なからず影響を与えます。

世界最大のオフィス家具メーカー、スチールケース社(本社:米国ミシガン州)は、世界20カ国1万4903人を対象に、従業員のエンゲージメント(その組織や仕事に対する帰属意識や愛着や誇り)と職場環境の関係を明らかにするための調査を実施しました。

その調査結果によると、日本の従業員エンゲージメントと職場環境満足度は最低。執務環境に対して、ネガティブに捉えている傾向も明らかになりました。

どうも日本の旧来の組織はコスト削減の名の下、あるいは「仕事は辛くて当然」「皆で歯をくいしばって当然」のような気合・根性ベースの「べき論」の下、狭い職場環境、暗い職場環境、熱い/寒い職場環境、電話する大声や怒号が飛び交う騒々しい職場環境を放置してきたきらいがあるように感じてなりません。そのような殺伐とした職場環境で、働く人たちのモチベーションが高まるでしょうか? 生産性が高まるでしょうか? このような職場では、人は自分がプロとしてリスペクトされていない気持ちにさえなります。

「この組織は自分をプロとして見てくれない」

こうして、そこで働く人たちはその組織や仕事に対するエンゲージメントも下げていきます。贅沢せよとは言いませんが、すべての人がプロの仕事に集中できる、それでいてコミュニケーションしやすい執務環境を提供するのは組織の責任と言えるでしょう。