職場の人間関係の良さについて調べた国際調査で、日本はダントツの最下位であることがわかっています。関係を改善する方法はないのでしょうか。組織変革の専門家である沢渡あまねさんは「職場のギスギスを未来志向で解消していくためには、若い世代に照準を合わせて組織をアップデートしていく。それしか方法はない」といいます――。(第1回/全3回)

※本稿は、沢渡あまね『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか』(SB新書)の一部を再編集したものです。

ミーティングでの喧嘩にうんざりする若い女性
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです

国際調査で日本は最下位

・テレワーク併用の働き方で、コミュニケーションがうまくいかなくなった
・高齢化が進み職場の空気がどんより。若手とベテランの間に溝ができている
・過度な成果主義や残業削減圧力により、助け合わない組織風土になった
・トップは「イノベーション」や「チャレンジ」を掲げる一方、現場の社員が新しいことをやろうとすると抵抗勢力が足をひっぱる
・二言目には「コスト削減」。職場の空気がどんどん暗くなる

このようなお悩みやご相談を、私は毎日のように企業の経営者や管理職から受けています。私は『組織変革Lab』(組織開発や変革を担う人たちのための、オンラインの越境学習プログラム)の主宰と講師をしていますが、コミュニケーションや組織風土の課題を挙げる参加者(主に企業の部課長)がとにかく多い。コミュニケーションや組織風土は、組織課題であり経営課題と言っても過言ではないでしょう。

そもそも日本の職場の空気は、世界レベルではどのように評価されているのでしょうか? 図表1をご覧ください。ISSP(国際比較調査プログラム)が2015年に調査した結果をまとめたものです。

日本は調査対象37カ国中、ダントツの最下位。残念ながら、日本の職場は世界一ギスギスしていると認めざるを得ないようです。

日本の職場がギスギスする3つの主な要因

なぜ、日本の職場はこんなにもギスギスしてしまったのか? 私はこれまで350以上の企業・自治体・官公庁で職場コミュニケーションと組織風土の問題に向き合ってきました。そこから、大きく3つの要因を見出しました。

1.旧態依然のマネジメントや働き方

日本は過去50~60年もの間、ものづくり産業を中心とする、大量生産型のマネジメントと組織風土を是としてきました。それが長らく「勝ちパターン」だったからです。トップの号令の下、皆が同じ時間に、同じ場所で顔を合わせ、決められた業務プロセスや作業手順に従い、決められたことを真面目にこなす。それで成果が出せたのです。その組織構造は同質性が高く、社歴が長い生え抜きの男性正社員が出世し権限を持つスタイル。なおかつ、「24時間戦えますか」のキャッチフレーズに象徴される、気合と根性で組織のために自己犠牲を厭わない人が高く評価されてきました。

組織カルチャーも労働制度も終身雇用が前提。私たち労働者は、会社や上司から理不尽な思いをさせられたとしても、新卒で入社した会社を我慢して定年まで勤め上げれば幸せな未来が約束されていました。