その後、突然のフェラーリ購入・そして売却など一連の行動が怪しまれ、紀子さんに株式投資での大きな損失がバレてしまった。5000万円以上あるはずの証券口座の残高はそのときすでに1500万円を切っていた。それが直接の原因となり、現在は家庭内別居中だ。

田中さん夫妻のようにお金に余裕がある「金持ち夫婦」が株式投資を始める際の、注意点や準備するべきことには何があるだろうか。

「お金に余裕がある人はリスク許容度が大きくなることで、含み損が拡大しても我慢することができてしまう。結果的に塩漬け株(現在の価格が買い値よりも下がっており、売ると損が出る状態であるために、やむをえず長期保有している株)になってしまうのです。

さらに資金の余裕から、下落トレンドが続く銘柄や急落している銘柄をナンピン買い(保有している銘柄の株価が下がった際、さらに買い増しをして平均購入単価を下げること)してしまう。これではさらなる深みにはまってしまいます。

そうならないためには、株を始める前に一定の売買ルールを設定しておくこと。利益の確定ポイント、ロスカットのポイント、保有期間の3つは必須です」

一般的には保有する株が「20%下落したら損切りをする」というセオリーがある。しかし、各々の状況によってルールは異なるものだ。どのルールが正解という話ではなく、決めたルールをいかに徹底して守るか。これが重要になるということだ。

レバレッジをかけると売るに売れなくなる

ここまで田中さん夫妻を例に、金持ち夫婦が株式投資をする際の失敗例について述べてきたが、同じくお金に余裕がある人が失敗するパターンとして非常に危険なのが、「信用取引」だと阿部氏は言う。

「信用取引は保証金の約3.3倍までレバレッジをかけられるため、リターンを大きく狙える一方で、逆方向に動いた場合の損失も大きくなります。損失が大きくなり、追加保証金(追証)が発生。追証を入れるか、ロスカットするか。その選択を迫られた状態で私のもとに相談へ来るお客様が後を絶ちません。信用取引をするにあたって、守るべきことが2点あります。

・銘柄の数を増やしすぎないこと
・自分で決めたロスカットルールを守ること」

株式投資に関する経験がまだ浅く、時間的制約もあるパワーカップルにも当然当てはまるアドバイスだろう。

「追証が発生しているお客様に言うことは、“売って上がればよし、売らずに下がるは罪”ということです。持っている株が売った後に上がるのは悪いことではない。そう思えないと、売るに売れなくなってしまう。信用取引をしている人はとくにその傾向が顕著です」

金持ち夫婦の投資というのは外野から見ると派手であるが、来た球を丁寧に打ち返すことの繰り返しだ。地味な作業をどれだけ続けられるか。そこが成功のポイントだ。

信用取引と追加保証金(追証)
(文=神里純平)
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