中国の核戦力が、アメリカの予想を超えるペースで拡大している。そしてアメリカの国防総省幹部は、中国の国防幹部とのコミュニケーション不足を懸念している。一方、バイデン米政権は依然として、中国がこの夏実施したとされる、極超音速兵器実験の影響を分析中らしい──。
国防総省が毎年議会に提出している報告書「中国の軍事・安全保障動向」の2021年版によると、中国が保有する核弾頭は、27年までに700発に達し、30年までに1000発を超える可能性がある。これは国防総省自身が昨年示した予想を大幅に上回る数字だ。
それでも中国の核戦力は、アメリカの備蓄(約3750発)の3分の1以下にすぎない。だが、急速な展開に、米国防幹部の間では、台湾侵攻の現実味を危惧する声も上がっている。
仮想敵国は当然アメリカ
アメリカの国防幹部は11月2日、「中国は、その野心と狙いを少しずつ明らかにしつつある」と語った。「軍事力と軍事的な理論を着々と進化させて、彼らが言うところの『強力な敵』と戦争をして勝利する能力をどんどん高めている……強い敵とは、もちろん、アメリカの婉曲表現だ」
中国の核戦力増強は、米軍の台湾防衛を阻止するための手段を増やすことになると、専門家らは指摘する。国防総省の報告書は、中国が既に核のトライアド(ミサイル、潜水艦、爆撃機)を構築して増強しており、核ミサイルサイロ(地下発射施設)など発射・運搬手段の改良も進めてきたとしている。
マーク・ミリー米統合参謀本部議長は11月3日、中国が向こう2年間に台湾に侵攻する「可能性は乏しい」が、この地域における将来の軍事行動に向けた能力増強を図っていることは明らかだと述べた。
中国は、警告目的でのミサイル発射やミサイルサイロの増強など、即応能力の強化にも努めているようだ。米国防総省の報告書は、中国国内には大陸間弾道ミサイル用の大規模サイロ施設が3カ所あると指摘している。
このうち2つは、新疆ウイグル自治区の砂漠地帯にあることが衛星写真から明らかになった。また、中国は核弾頭をさらに増やすために原料となるプルトニウムを獲得するべく、高速増殖炉や使用済み燃料の再処理施設などの「核燃料サイクル」にも投資しているという。
中国の超音速兵器の開発ペースは、アメリカを上回っていることも分かってきた。音速の最大15倍の速さでミサイルを推進できるという超音速燃焼ラムジェット(スクラムジェット)の開発を進めているとされる。今夏には極超音速ミサイルの発射実験を行ったことが報じられた。