あらかじめ落としどころを決めておき、会議はあくまでも自分が達成したいことを関係者間で決める場である、と割り切るのです。最初にビジョンや戦略をきちんと丁寧に話し、このことに付随して意見をくださいという聞き方をするべきです。そして、その目的を参加メンバーに落とし込んでもらうために、全員に発言してもらうようにします。出前館時代には発言しない人は会議に出ないように言っていました。それは参加者にとって肚落ちするために必要なことです。ただ聞いているだけだと他の人の話をきちんと咀嚼できないかもしれませんが、自分が発言しなければならないと思えば、真剣に話を聴くようになります。

日本M&Aセンター専務執行役員・CCO 中村利江氏
日本M&Aセンター専務執行役員・CCO 中村利江氏

会議では、上から「やってください」と言うよりも、「みんなで決めた」という合意の意識付けをすることが大切です。そして会議で決められたことを実行する際に「自分が関わった」という意識があれば、次の行動も積極的に考えるようになる。その意識付けの有無が、実行段階での成功のカギを握っているのです。

一方、参加者としてプレゼンする場合は、冷静にメリットとリスクを説明します。リスクに比べてメリットが大きいことを強調し、リスクヘッジの方法も提案します。そして、味方になってくれそうな人はもちろん、過大なリスクを主張しそうな人にもあらかじめ根回しをして、全体的に賛成のムードに持っていくことが大切です。

社外の人との会議も基本的には同様です。例えば新規事業を提案する場合は、メリットを強調して「リスクはこのように少ないのですがどうしますか?」と聞く。「やってください」とお願いするのではなく、「どう考えてもメリットが大きいので、やれなかったら御社は大損しますよね?」と持っていくのです。「決まらないなら他社へ行く」というニュアンスも必要です。

失敗は、その場で「アイデア出し」をさせるということ

普段会議をしていて思うのは、会議も営業と同じだということです。意見をぶつけあって延々議論している暇はなく、明確にゴールを決めてそこに向かって進まなければなりません。きびきびした会議にするためには、参加者のレベルに応じた会議運営をすることも大切です。現場の人たちを集めた会議でやってしまいがちな失敗は、その場で「アイデア出し」をさせるということです。なぜなら追い詰められないと本物のアイデアは出てきません。

アイデア出しの会議をするのであれば、管理職レベル以上の人たちに参加者を絞り、そのうえで長時間の研修などを行ってアイデアが出るまで追い詰めた後に実施するのです。逆に現場レベルの具体的なアイデアを拾いたければ、オフィシャルな会議ではなく、リラックスして話せるランチミーティングなどを別途設定するべきでしょう。

会議では、個々の発言が長すぎて時間オーバーとなる場合があります。それを避けるためには、指名して発言を求める際に「どう思いますか?」ではなく「こういう点についてどう思いますか?」とポイントを絞った聞き方をすることです。要点を絞れば、関係のない話をする可能性は低くなります。また、「この人に話を聞いたらこういう答えが出てくるであろう」という想定回答をシミュレーションしておくことも大事です。