イギリスで5月以降、ペットとして飼われている猫たちの衰弱と不審な死が相次いで報告され、共通して特定のペットフードを食べていたことがわかった。
症状を発症した猫の多くは、「猫汎血球減少症」と診断されている。ウイルス性の感染症であり、感染すると数日の潜伏期間を経て赤血球・白血球・血小板の数が急速に減少する。初期の症状としては食欲不振や発熱などであるため、一般的な風邪と区別しづらい。重症化するにつれて目と鼻を含む体の各部からの出血や、嘔吐・下痢など消化関連の異状がみられるようになり、最悪のケースでは死に至る。
今年5月ごろからイギリス各地で報告が目立ちはじめ、症例は報告された数だけで520例を数えるようになった。獣医から報告が挙がっていないケースが大半を占めるとみられ、実際の数はこれを大幅に上回る可能性がある。報告された例のなかでは、感染した猫の6割以上が命を落としている。
原因として疑われているのがキャットフードだ。感染した猫のいる家庭から回収したキャットフードのサンプルを英食品基準庁(FSA)が分析したところ、カビが生成する毒素のマイコトキシンが検出された。
ただし、マイコトキシンが飼料や食品などから検出される事例はたびたび発生しており、ペットフードから検出されたことをもって直ちに猫汎血球減少症の原因であると断定することはできない。FSAは他の規制当局と連携して調査を続ける方針だ。
フェイスブック・グループが手がかりを発見
イギリス各地で体調を崩す猫が続出するなか、当初その原因は謎に包まれていた。究明に大きく貢献したのが、SNSを通じたオーナーたちの連携だ。
南西部ウェールズ地方に住むある女性は5月下旬、愛猫の感染を知った。その原因を突き止めたいという思いに駆られた彼女はフェイスブック上でグループを立ち上げ、猫汎血球減少症と診断を受けた猫の飼い主たちに情報提供を呼びかけた。
すると、すぐに共通の特徴が浮かび上がった。どの家庭でも、特定のペットフード・メーカー3社が販売する低アレルギー性のキャットフードを与えていたのだ。さらに調査を進めると、いずれの製品にも同じ製造コードが記載されており、ある1社の製造工場で生産されていることが判明した。
女性がロンドンの王立獣医科大学に内容を報告すると、早くも翌6月15日にはFSAが製品の回収措置を講じた。ペットフード3社による計21製品を対象とした、大規模なリコールだ。
迅速な対応の一方で、ペットフードの購入者に正しくリコール情報が伝わらないという不手際も明るみに出ている。英ガーディアン紙は、リコール対象となった販売者の1社が技術的エラーにより、広告メールを拒否している登録ユーザーにリコール情報を送信していなかったと報じている。重要な情報であるため、本来は広告受信の可否にかかわらず送信対象とすべきであった。